研究課題/領域番号 |
15K17513
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
鍋島 克輔 徳島大学, 大学院理工学研究部, 准教授 (00572629)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 代数的局所コホモロジー類 / b-関数 / ミルナー数の列 / limiting tangent space / D加群 / 包括的グレブナー基底系 |
研究実績の概要 |
平成28年度は,孤立特異点の重要な不変量の1つであるμ*とlimiting tangent spaceの計算アルゴリズムの構成と実装を行うと共に,特異点解析にD加群的なアプローチを試み,パラメータ付きホロノミーD加群やb-関数の計算アルゴリズムの構成と実装を行った.μ*は特異点研究に重要なWhitney equisingularityと同値な量として知らているが,公式や厳密に計算する手法が無かった.このμ*をパラメータ付き代数的局所コホモロジー類を利用し計算するアルゴリズムを構成し計算機にプログラムを実装し,今まで知られていなかった有名な特異点のμ*を計算しリストとして発表した.また,パラメータ付き代数的局所コホモロジー類を利用し,limiting tangent spaceの計算アルゴリズムを新たに構成した.新たなlimiting tangent spaceの計算アルゴリズムと既存のグレブナー基底を利用する方法を比較すると,我々の代数的局所コホモロジー類を利用した方法が格段に効率的であることがわかった. D加群的な特異点研究は昔から知れている.その中でも,特異点の重要な不変量としてb-関数がある.b-関数の根に付随するホロノミーD加群の局所コホモロジー解はまさしく代数的局所コホモロジー類で表すことができるので,b-関数を介することで代数的局所コホモロジー類の理論が使え,特異点を解析することができる.この手法を使う前段階とし,パラメータ付きホロノミーD加群やb-関数の計算アルゴリズムの構成と実装を新たに行った.これにより今まで知られてなかったμ-constant deformationに対するb-関数の計算法とinner modality 2のb-関数のリストを作成することができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定のμ*の計算とlimiting tangent spaceの計算法が構成できたと共に計算機への実装も行われている.また,D加群的な特異点研究にも手を出すことができ,b-関数を介することで代数的局所コホモロジー類の理論で特異点を解析する前段階まで進んでいる.計画書の大半の内容が順調に進んでいると共に良い結果が多く得られている.このままで進めば,計画書に書いて無いような新しい結果が多く得られそうである. 計画書に書いてあることで進んでない1つの問題は,局所ボーダー基底の構成である.パラメータ付き代数的局所コホモロジー類の計算法の確立を進めるにしたがって,上述したように関連する問題を多く認識し,そちらの研究に時間を費やしたために局所ボーダー基底の構成には未だに時間がさけていない.時間ができれば,計画書に記した問題の1つである局所ボーダー基底の構成をする. 局所ボーダー基底以外の数的局所コホモロジーを使った問題の研究については,十二分に進んでおりまだまだ掘り進められそうである.
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今後の研究の推進方策 |
前年度までに構成できたアルゴリズムや実装は,現在,世界的に唯一のものが多い.これらを利用することで新たなことが多くできる.代数的局所コホモロジー類を利用しブルース・ロバート・ミルナー数が計算できるが,ブルース・ロバート・ミルナー数の性質については良く知られていない.計算実験の例から何かしらの性質が解明できればよい. b-関数を介することで代数的局所コホモロジー類の理論が使え,特異点を解析することができる.この方法をアルゴリズム化し本年度は計算機に実装する.また,Bernstein-Satoイデアルと完全交叉特異点の関係が近年知られるようになっている.完全交叉特異点の場合にも,超曲面のミルナー数と代数的局所コホモロジー類の関係があると思われる。しかしながら,具体的な例が一つもない.b-関数と代数的局所コホモロジー類の研究で培ってきて経験を完全交叉特異点に利用し,Bernstein-Satoイデアルと完全交叉特異点の関係を代数的局所コホモロジーを使って計算する.これらが,現在研究をしていることと直接かかわることなので,今までと同じ方針で研究推進する.時間があれば,計画書に書いている1つの問題の局所ボーダー基底の構成をする.
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次年度使用額が生じた理由 |
国際研究会議に参加する計画であったが、大学の行事・講義と重なってしまい,参加を見送った.たま,研究打合せで他大学に行く予定であったが,主に相手側がこちらに来てくれ(4-5回)旅費を使わなかった.
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次年度使用額の使用計画 |
7月にある国際研究集会(イスラエル・エルサレム工科大学)に出席し研究成果発表を行う予定である.これにより,前年度の余りはすべて消化される.
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