研究課題/領域番号 |
15K17519
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
中筋 麻貴 上智大学, 理工学部, 准教授 (30609871)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | Iwahori Whittaker関数 / Hecke環 / Casselman基底 / Yang-Baxter基底 / Schur多重ゼータ関数 |
研究実績の概要 |
本年度は,p進代数群上のIwahori Whittaker関数が構成するベクトル空間の基底に関するCasselman問題,および多重ゼータ関数の拡張として導入されたSchur多重ゼータ関数に対し,それぞれ次のような研究を行った. 1.半単純p進群の主系列表現に対してIwahori部分群の作用で固定されるベクトルの空間には, 絡作用素の双対として定義された「Casselman基底」と,主系列表現の定義より導かれる「自然な基底」が存在する.これらの基底の変換行列に関する問題(Casselman問題)に関し,成瀬弘氏(山梨大学)との共同研究において,Iwahori-Hecke環上のYang-Baxter基底を用いることによって,変換行列の双対性など,基底に関するいくつかの性質を得ることができた.またそれらをKostant-Kumarのtwisted group algebraに応用することで,Casselman問題に対して,一つの解を得ることができた.さらに,Casselman問題と先行研究で得られたBump-Nakasuji予想(2011)の問題点の違いを明確にすることができた. 2.多重ゼータ関数の拡張として導入されたSchur多重ゼータ関数に対し,Phuksuwan氏(Chulalongkorn大学)との共同研究において,このゼータ関数が満たす性質について組合せ論的手法を用いて研究を行い,ある条件下でJacobi-Trudi formulaの類似を得ることができた.得られた成果については現在論文にまとめている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1について,成瀬弘氏の協力のもと,当初の研究計画に入っていなかったKostant-Kumarのtwisted group algebraを導入したことにより,Casselman問題の解決にむけて一気に研究を進めることができ,Casselman問題に対して具体的な解を1つ与えることができた.一方,本来の計画であった量子群のalcove理論を用いた成果については,いくつかの問題を克服することができず,具体的な成果に至っていない. 2について,先行研究で用いた組合せ論的手法の類似を応用することにより,Schur多重ゼータ関数の性質を得ることができた.本関数のもととなるSchur関数はIwahori Whittaker関数と関連するワイル群多重Dirichlet級数において重要な役割を果たす関数であり,本成果により多重ゼータ関数およびSchur関数の研究に対する新しい展望が開けた.
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究計画であった量子群のalcove理論を用いた成果について引き続き研究を行ってゆく.また, Hecke理論とシューベルトカルキュラスの基本的概念と手法について理解を深め,これを応用することで28年度の研究計画として考えているBump-Nakasuji予想の解明に着手する.
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次年度使用額が生じた理由 |
27年度の研究計画では,量子群のalcove理論を用いてNaruse-Nakasuji予想を解決し,その成果を用いてCasselman問題に取り組む予定であった.しかし,問題点の克服が遅れていたことに加え,新たなアイデアとして導入したtwisted group algebraを用いた手法がCasselman問題の解決に有力であることが期待できたことから,Naruse-Nakasuji予想の解決を次年度に回さざるをえなくなった.このため,Naruse-Nakasuji予想の解決に必要だとして計上していたパソコンの購入( 150千円)および研究打ち合わせに関する旅費(50千円)が次年度使用額となった.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額201390円について,量子群のalcove理論を用いてNaruse-Nakasuji予想に取り組む上で必要なパソコンの購入(150千円)および本研究内容において必要となる研究協力者との研究打ち合わせ(50千円)に使用することを計画している.
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