本研究では,有限体上の一変数有理関数体K上のCarlitz多重ゼータ値やCarlitz多重ポリログ値について詳しく調べた.本研究により得られた結果は大きく分けて以下の3つである.これらは何れも,台湾のChieh-Yu Chang氏との共同研究による. (1) Kの有限素点vに対し,v進Carlitz多重スターポリログを,あるt加群の対数関数を用いて記述した.この表示を用いて,v進Carlitz多重ポリログの単位閉円盤への解析接続を与えた.また,無限進Carlitz多重ポリログ値がCarlitz周期の冪とKの元の積で表されることと,対応するv進Carlitz多重ポリログ値の族が0になることが同値であることを示した. (2) K上の有限多重ゼータ値および有限多重ポリログ値を導入し,それらの基本的性質を調べた.特に,前者が後者のK上の線形結合で表されること,およびThakur氏による無限進Carlitz多重ゼータ値に対する調和積の有限類似が成立することを示した. (3) 無限進Carlitz多重ゼータ値を,あるt加群の対数関数を用いて記述した.この表示および(1)の解析接続と同様の手法を用いて,Thakur氏によって定義されたものとは異なる,新たなv進Carlitz多重ゼータ値を定義した.また,無限進Carlitz多重ゼータ値の張る空間からv進Carlitz多重ゼータ値の張る空間へのwell-definedな線形写像を与えた.これにより,v進Carlitz多重ゼータ値の間の線形独立性から無限進Carlitz多重ゼータ値の間の線形独立性が従う. (1)と(2)は前年度までに得られた結果であり,投稿した論文が雑誌に掲載された.(3)の結果は主に今年度に得られたものであり,論文にまとめて現在投稿中である.
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