研究実績の概要 |
加群の退化理論は有限次元多元環上の表現論の幾何学的手法として導入され, 加群の分類理論や表現型理論と深い関係がある。K.BongartzやG.Zwaraらによって精力的に研究されてきた。2004年, 吉野雄二により, 退化の定義が高次元され, より広いクラスの退化研究が可能になった。本課題の目的は当該研究者がこれまでに得られてきたCohen-Macaulay加群(以下, CM加群)の退化の知見を基に, 加群の退化理論を用いてCM加群の安定圏を解析し, 退化の様子によって基礎環の表現論的性質を特徴付けることである。 平成27年度はCM加群の安定圏における退化(安定退化)の考察を行った。基礎環がGorenstein局所環で有限表現型を持つとき, 安定圏でのHom集合の次元によって定義される関係(安定Hom順序)が半順序関係になるための十分条件を与えた。これにより, 表現型のいくつかの場合には実際に, 安定Hom順序は半順序関係になり, CM加群の安定退化の関係によって定まる順序と同値な順序を定めることがわかった。高次元の退化理論において, 具体的に退化の例を計算することは容易ではない。この結果によって退化の計算は安定Hom順序の計算に帰着でき, 退化の例をより多く計算できるようになった。このことは今後の研究を推進する上で具体例を検証する際に有益である。 以上の結果は論文にまとめ, 投稿中である。
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