研究課題/領域番号 |
15K17532
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中村 伊南沙 東京大学, 大学院数理科学研究科, 特任研究員 (60568161)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 曲面結び目 / 2次元ブレイド / チャート / 1-ハンドル |
研究実績の概要 |
4次元空間内の曲面結び目について、特に曲面結び目の分岐被覆の形をしている「分岐被覆曲面結び目」(曲面結び目上の2次元ブレイド)についての研究を進めた。ここで、曲面結び目とは、4次元空間内に埋め込まれた閉曲面のことである。また、ブランチ点も許すことを明確にするため、「被覆曲面結び目」を「分岐被覆曲面結び目」に変更することにした。 分岐被覆曲面結び目は、曲面結び目上に描かれるある種のグラフ、「チャート」で表される。チャートループ付き1-ハンドルを加えるという操作によって、ある「単純化」を考えることができ、「単純化数」という不変量が定義される。平成29年度は、「単純化数」およびそれと類似の方法で定義される「弱い意味での単純化数」の評価について、これまでの結果を踏まえた上でさらに研究を進めた。具体的には以下の2点を論文にまとめた。 (1)分岐被覆曲面結び目の単純化について、「単純化数」と「弱い意味での単純化数」の新しい上からの評価をいくつか与え、これまでの結果よりも「さらに単純化された形」に変形できることを示した。チャートの同値変形、C-ムーブの中で、白い頂点が4個関わっているCI-M4 ムーブと呼ばれる変形を用いることがキーとなった。 (2)分岐被覆曲面結び目はブランチ点を持たない場合もあるが、分岐被覆曲面結び目が実際ブランチ点を持つ場合、言い換えれば分岐被覆曲面結び目を表すチャートが黒い頂点を持つという、特別な場合について考察し、単純化数の上からの評価を与えた。黒い頂点をもつことにより、(1)よりよい評価を得ることができ、証明もより簡潔になった。 また、学習院大学トポロジーセミナーを開催し、この科研費で遠方の研究者を講演に招待することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
分岐被覆曲面結び目の単純化数の評価については予想よりも研究が進んだが、カンドルコサイクル不変量や結び目群については結果を得ることができなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの結果を踏まえた上で、分岐被覆曲面結び目について、「単純化数」および「弱い意味での単純化数」の評価についてさらに研究を進める。カンドルコサイクル不変量や結び目群についても関連研究を学びつつ、分岐被覆曲面結び目の問題の解決に応用できないか模索する。さらに2次元ブレイドの概念の拡張についても考察する。
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