非ケーラー多様体の重要なクラスである佐々木多様体の非可換ホッジ分解について研究を行った。コンパクト佐々木多様体上では半単純な平坦束とベーシックなヒッグス束の間に1対1の対応があることがわかり、コンパクト佐々木多様体は非可換ホッジ分解が起こることがわかった。より詳しくは次のことを示した。コンパクト佐々木多様体上の半単純な平坦束の調和計量を考えると、佐々木構造からReeb葉層構造上に標準的に定まる横断的ケーラー構造に関してベーシックな多重調和計量となることをしめした。これにより、半単純な平坦束を横断的ケーラー構造に関するベーシックなヒッグス束に対応させることができる。また、ベーシックなヒッグス束上でベーシックなチャーンクラスについての安定性条件を考えることで、エルミートーアインシュタイン計量が構成できる。これにより、ベーシックなヒッグス束を半単純な平坦束に対応させることができる。この二つの対応によりコンパクト佐々木多様体は非可換ホッジ分解が起こることがわかった。 この結果を応用することによって、佐々木多様体のベクトル束に関するBogomolov-Gieseker型の不等式や、佐々木多様体をパラメーターとするVariation of Hodge structureの理論あるいはコンパクト佐々木多様体の基本群に関する構造理論など多様な結果が得られた。また、非可換ホッジ分解のリーマン面のモジュライ空間への応用のアナロジーを考えることによって、佐々木多様体の非可換ホッジ分解による3次元多様体の分類理論の可能性が見出された。
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