研究実績の概要 |
申請者は測度距離空間(完備可分な距離空間とその上の確率測度のなす三つ組)上の幾何解析、特に次元が無限大に発散するときの挙動の解析に興味がある。そこでリーマン多様体の次元が無限に発散するときの挙動を、リーマン多様体とその距離関数および体積要素の組を測度距離空間とみなし解析した。 ここで測度距離空間の収束には様々な収束があり、状況に見合った収束を考えることは非常に重要である。例えば、半径がNの平方根であるN次元球面の上の一様確率測度をk次元ユークリッド空間に射影した測度をμ(N,k)とする。このとき、Nを無限大にすればμ(N,k)とk次元ガウス測度のProkhorov距離は0に近づくことが既知である。しかしμ(N,N)とN次元ガウス測度のProkhorov距離は、Nを無限大にしたときに0にはならないことを東北大学の塩谷隆氏との共著により示した。さらに半径がNの平方根であるN次元球面の一般化であるスケール変換したスティーフェル多様体の一様確率測度と、適切な次元のガウス測度のProkhorov距離は0にならない。しかしProkhorov距離が導く位相よりもより弱い位相を導くある距離に関しては、スケール変換したスティーフェル多様体の一様確率測度がある条件下で無限次元空間のガウス測度のなす測度空間に収束することを示した。 そしてこの弱位相より弱い位相は、集中の不等式と深く関係する位相であることより、距離関数と測度の関係を表す不等式の新たな一面を発見できたと言える。
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