研究課題/領域番号 |
15K17537
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
椋野 純一 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 博士研究員 (50737301)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ローレンツ幾何 / 基本群 / 擬リーマン幾何 / 曲率テンソル |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、完備Lorentz多様体がAndersson--Howardの曲率条件を満たしたとき、その多様体の基本群に関する精密な状況を明らかにすることである。この研究は、Lorentz幾何において、Riemann幾何におけるMyersの定理(下から正の定数で抑えられた曲率をもつRiemann多様体の基本群は有限である)の類似が存在するかという問いに関する研究である。 本研究に関するこれまで得た結果の証明は、Penroseの特異点定理を使用したものである。Penroseの特異点定理を使わずに証明できるかは、今後、一般化を考える上で重要なステップの一つである。また、もしPenroseの特異点定理を使わなければ、より一般の不定値計量の擬Riemann多様体まで一般化できると考えられる。 上記のことを目標にし、前年度まで、一般の不定値計量の擬Riemann捩れ積に対する結果を得ることができたことを報告した。今年度は、擬Riemann捩れ積を含む擬Riemann沈め込みの状況で考察を行った。その結果、ファイバーが閉Riemann多様体で、底空間の計量が負定値の計量を持ち、擬Riemann沈め込みで水平分布が可積分の場合に、ファイバーの基本群が有限群になることを示し、さらに、全空間の基本群は指数的に増大することを明らかにした。これは、Riemann幾何における正曲率の基本群の構造とは異なる現象である。また、証明には、Penroseの特異点定理を使っていない。さらに、自然な擬Riemann沈め込みの水平分布が可積分でないかつファイバーの基本群が有限群である擬Riemann等質空間の新しい例を発見することができた。当結果は、アーカイブに掲載し、公開している (arXiv:1704.04944)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究計画では、Lorentz幾何に限定した内容であったが、より一般の擬Riemann幾何に関する結果を得ることができた。一方で、当初の研究計画にある時間関数の存在問題の研究をなかなか進めることができていないため、やや遅れているとした。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に新しく得た擬Riemann幾何での結果の証明を詳細に分析して、擬Riemann幾何、特にLorentz幾何での位相と完備性の関係の理解を深めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究と論文執筆に集中したいと考えて、当初予定していた出張の一部を取りやめたため。
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次年度使用額の使用計画 |
書籍の購入に当てたい。また、関連する国内、国外の研究集会での成果報告の旅費に使うことで、研究をより活発にしていきたい。
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