研究実績の概要 |
重み付きグラフの非線形スペクトルギャップをコクセター群上で考えるための一つのステップとして, 一般の二面体群を扱った. 二面体群について, 重みを動かした時のスペクトルの変化を調べ, Wirtinger の不等式の形の予想を立てた. 非正曲率空間に対する Wirtinger の不等式の証明はまだできていないが, CAT(0)不等式から導かれる二面体群上の不等式の族を得るところまではできている. これらの不等式が独立であることが証明できると, サイクルの場合と同様に Wirtinger の不等式が証明できると考えられるが, それにはまだ計算が必要となる. また, 4次対称群上の Wirtinger の不等式に対する, これまでに分かっていたアドホックな証明を見直し, より見通しの良い形で理解することができるようになった. すなわち, Wirtinger の不等式を示すために, 我々はまずコクセター群の表現空間内の軌道のうち同一平面上にある4点に対してCAT(0)不等式を適用し, これらを十分な数だけリストアップして連立不等式を得て, そこから導出するというやり方を取っていたのだが, 4次対称群の時は考えるべき表現空間の次元が3であるために軌道の成す多面体を目で見ることができ, 同一平面上にある点は目で見て探すことができ, リストアップするべき平面の集合も適当に見つけることができた. このやり方は一般化が不可能であるため, どのような群の元に対して軌道が同一平面に乗るのかを理解し, その切り口の幾何的性質を理解し直し, 一般化のための知見を得た.
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