研究課題/領域番号 |
15K17539
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
鈴木 咲衣 京都大学, 学内共同利用施設等, 助教 (40636263)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 量子不変量 / 普遍量子sl2不変量 / ミルナー不変量 / ウェイトシステム |
研究実績の概要 |
本研究の目的は量子不変量の幾何学的性質を明らかにすることである.そのために,J.B. Meilhanとの共同研究で量子不変量のひとつである普遍量子sl2不変量と,絡み数の拡張であるミルナー不変量との関係を調べてきた.前年度の研究でウェイトシステムを介して普遍sl2不変量にミルナー不変量が現れることが解っていた.今年度はその次の段階として単連結なグラフの上での普遍sl2不変量のウェイトシステムの振る舞いについて調べた.結果として,単連結なグラフの上で,ウェイトシステムの次数が2または奇数のときは全射となり,4以上の偶数の時には一次元の余核を持つことが解った.さらに,単連結なグラフの上でのウェイトシステムの核の対称群の表現としての標数を与えた.前年度の研究と合わせると,普遍量子sl2不変量がミルナー不変量をどの程度,どのように含んでいるかが明らかになった. また,普遍sl2不変量を3次元的に再構成した.普遍sl2不変量は絡み目の図式を用いて構成され,そこでは交差にR行列を対応させる.本研究では絡み目の補空間の理想単体分割を用い,単体に"S行列"を対応させることで普遍sl2不変量を3次元的に再構成した. 10-12月のストラスブール大学とライデン大学での滞在ではG. Massuyeau, A. Vera, R. van der veenと研究交流を行った.3月にはA. Veraを京都へ招へいし,さらなる研究交流を行った.さらに東京大学で研究集会「Workshop on finite type invariants of 3-manifolds」を主催し,有限型不変量に関する知見を深めた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は量子不変量の幾何学的性質を明らかにすることであり,これまでにミルナー不変量と普遍量子sl2不変量の関係を調べてきた.これは有限型フィルトレーションと普遍量子sl2不変量の関係の一部を記述している.当初の計画ではH27年度にクラスパーを用いて有限型フィルトレーションと普遍量子sl2不変量の関係をもっと一般に研究するはずであったが,その代わりにH28年度以降の研究計画にある普遍量子sl2不変量のウェイトシステムの研究の方を先に行った.これはミルナー不変量とコンチェビッチ不変量の関係がよく知られており,ミルナー不変量の部分のみであれば結果があるていど予想できたためである.この研究により,ミルナー不変量の部分のみは良く解ったため,それをクラスパーを用いて有限型フィルトレーション全体に拡張していくことが次の段階である.
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的は量子不変量の幾何学的性質を明らかにすることである.研究計画作成当初は普遍sl2不変量の図式を用いた構成のみしかなかったため,その構成を用いた研究計画であった.しかしながらそれらの研究には普遍sl2不変量の3次元的な構成を用いる方が自然だと思われるため,3次元的な構成を用いた研究計画に変更する.量子不変量を3次元的に定義している例として,Kashaev不変量,Turaev-Viro不変量がある.まず普遍sl2不変量の3次元的な構成とそれらの不変量の関係を調べる.Kashaev不変量から絡み目の補空間の体積が得られるというのが体積予想である.本研究では普遍sl2不変量を用いて補空間の体積を記述することを試みる.Turaev-Viro不変量との関係を調べることで,3次元多様体の量子不変量への応用も見込まれる.さらにこの構成を用いて有限型フィルトレーションやグロープフィルトレーションと普遍sl2不変量との関係,ザイフェルト曲面などの幾何学的対象と普遍sl2不変量との関係を調べる.
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次年度使用額が生じた理由 |
ノートパソコンの購入を延期したため、物品費に誤差が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
ノートパソコンを購入する。
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