研究実績の概要 |
2014年度から2018年度にかけて,普遍量子sl2不変量の幾何学的性質について研究を行った。 J. B. Meilhan(Grenoble University)との共同研究により, Milnor不変量と普遍量子sl2普遍量の関係を調べた。Milnor不変量は絡み数を一般化した不変量であり,代数的,組み合わせ的に定義された量子不変量との関係は非自明である。HabeggerとMasbaumはKontsevich不変量からMilnor不変量を導出した。本研究では普遍量子sl2普遍量のある射影部分がMilnor不変量を用いて表されることを示した。 J. B. Meilhan(Grenoble University)との共同研究により, 単連結なヤコビ図の上でのsl2ウェイトシステムの性質をしらべ,像と核の次元と対象群の加群としての指標を決定した。量子群Uq(sl2)の3次元既約表現に対する不変テンソルのcanonical基底を,ヤコビ図とJones-Wenzlの射影を用いて変形したものを利用した。 絡み目とタングルの普遍量子sl2不変量を、補空間の理想単体分割を使って再構成し、その構成が図式を用いた構成と同等になることを示した。一般に量子不変量は絡み目図式とR行列を用いて構成される。図式は2次元的な対象であり,3次元の中の絡み目の次元をひとつ落とす。図式とR行列を用いた代数的,組み合わせ的な定義により,量子不変量と絡み目の3次元的な幾何学的性質の関係は明らかではない。理想単体分割は絡み目の補空間を3次元のまま分割する方法であり,図式を経由した定義とは違う側面から量子不変量を調べる枠組みになる。ここからは単体分割を用いた3次元的な枠組みを使って,既存の量子不変量を統一的に理解していきたい。
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