研究実績の概要 |
当該年度においてはまず Bishop 型不等式を満たす RCD 空間の局所的な性質について詳しく調べた論文を発表した. この論文では Bishop 型不等式を満たす RCD 空間では測度の振る舞いが非崩壊の Ricci limit 空間に非常に近くなるということを示し, 結果として接錐が距離錐になっているということを示した. これにより, RCD 空間の中に解析しやすい族を定義できたことになる. これは非崩壊の Ricci limit 空間を含むが, 完全に一致はしていないことがわかる. 論文では具体的に例を挙げた. その内容について研究集会で講演した際仮定の下で測度は Hausdorff 測度と同値であるが, Radon-Nikodym 微分の振る舞いはどのようになるかという質問をされた. 現在このテーマについて考えているが, 多様体の場合でさえ重みをつけると測度の振る舞いは非常に複雑になりうるので新しい技術を開発することが求められている. 現在それについて考えているが, なかなか思うような結果は出ていない. しかしながら, 二次元の RCD 空間の距離関数の凸性を直接調べることで Alexandrov 空間になることを示すという方針が立ち, 現在大阪大学の太田慎一氏と共同研究を行っている. これが示されれば, 測度は Hausdorff 測度になり, コンパクトであればそれしかないことも示せると考えている. また RCD 空間上の正則集合が正測度を持つための十分条件を一つ見つけたのでこれについて論文を作成中である. 具体的には, それより高い次元の正則集合が存在しないならば正測度をもつということを示した. これにより, 非崩壊の RCD 空間の概念をさらに明確に捉えるための重要な一つのステップが示されたことになる.
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今後の研究の推進方策 |
正則集合が正則度を持つための十分条件についてさらに理解を深める. 距離関数をテスト関数と呼ばれるよい関数で近似することで, 極限操作を施してもいい性質が保たれるというのが基本方針であるが, 近似することによって当然失われるものもある. 今年度は熱半群の性質をさらに詳しく調べることで, テスト関数のよい部分族を見つけることによってそれを応用し様々な問題に挑戦していこうと思っている.
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