研究実績の概要 |
本年度は昨年度に引き続き RCD 空間の局所的な性質, 具体的に言えば正則集合と呼ばれる, 接錐がユークリッド空間と同型であるような点全体の集合の振る舞いを調べた. 前年度ではそのような正則集合が正測度を持つような十分条件を見つけたが, 今年度はさらにこの研究を進めて RCD 空間の次元を定義することに成功した. この次元の定義は多様体の場合は自然な次元の概念と一致し, Ricci limit 空間においては Colding-Naber の定義した次元と一致する. さらに前年度接錐の次元が一意になるような RCD 空間のクラスを考察したが, これを含むような非崩壊な RCD 空間と呼ばれるものが De Philippis-Gigli により定義された. このような非崩壊な RCD 空間のクラスではここで定義した次元が Hausdorff 次元とも一致することを示した. さらに RCD 空間の "次元の上限" に相当するパラメータ N が整数である時, 彼らは考えている RCD 空間の Hausdorff 次元が N-1 以下であることを示した. この結果を使うと, RCD 空間の Hausdorff 次元がちょうど N-1 であることと, ここで定義した次元が N-1 であることは同値であることもわかる. これは Ricci limit 空間ではすでに知られていたが, 証明の手法は異なっている. またこの次元が Gromov-Hausdorff 収束に関して下半連続であることも示した. 一般に Hausdorff 次元に関してはこのような半連続性が出るかは難しい問題である. 以上の研究をまとめて論文にし, arXiv にアップロードしてある(arXiv:1708.04309).
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