研究実績の概要 |
平成28年度は,課題Aについては,枡田幹也氏,堀口達也氏との共同研究により,主にregular semisimple Hessenberg多様体のコホモロジー環の研究を行った.特に,Hessenberg関数がh=(h(1),n,...,n)の形をしているケースについて,その整数係数のコホモロジー環を明示的に決定し,さらにそこへの対称群の作用に関する不変部分環についても環構造の明示的表示を与えた.有理係数においては,上記不変部分環とregular nilpotent Hessenberg多様体のコホモロジー環が同型であることが知られているが,今回の我々の表示はこの結果と相性のよいものであった.また,課題Bについては,ルート系に付随するトーリック多様体の(有理数係数の)コホモロジー環は次数2の元で生成されるポアンカレ双対代数であり,コホモロジー環はその体積多項式のみを用いて記述できるが,Lauren DeDieu氏,Federico Galetto氏,原田芽ぐみ氏との共同研究の特別な場合として,その体積多項式の一つの計算公式が得られた.また,昨年度から続いているPeter Crooks氏との共同研究をさらに進め,極小冪零軌道上のHessenberg多様体の既約成分の記述を精密化した. 一方で,別の研究費(日本学術振興会特別研究員 学振PD)の研究遂行のため,平成28年の7月から平成28年12月までの6ヶ月間,トロントのFields InstituteにてCombinatorial Algebraic geometryというプログラムに急遽参加することにした.このプログラムは本研究とは直接的な関係がなく,滞在期間中の上記研究課題の遂行の効率を考え,この期間中はやむを得ず本研究を中断することにし,平成29年度に研究期間を持ち越すことにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Hessenberg多様体のコホモロジー環の研究(課題A)については当時の計画以上に進展している.実際,課題Aの平成28年度の目標すでに27年度に達成しており,すでに十分な成果が出ている.また,28年度はregular semisimple Hessenberg多様体のコホモロジー環についてもHessenberg関数がh=(h(1),n,...,n)のケースについて明示的に決定し,当初の計画を超えて研究が進んでいる. ルート系に付随するトーリック多様体のコホモロジー環 の研究(課題B)については,このトーリック多様体の(有理係数の)コホモロジー環の体積多項式の一つの計算公式が得られた.これらを総合して,本研究はおおむね順調に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,課題Aについては,regular semisimple Hessenberg多様体について一般のHessenberg関数でのコホモロジー環の明示的な表示を調べていきたい.h=(h(1),n,...,n)のケースについてはよく理解できたので,次のケースとしてh=(h(1),h(2),n,...,n)やh=(m,...,m,n,...,n)が考えられるが,このようなケースのコホモロジー環を調べることで一般のケースにつなげたい.課題Bについては,ルート系に付随するトーリック多様体のコホモロジー環の体積多項式の一つの計算公式が得られたので,これを用いてコホモロジー環が区別できるかどうか調べていきたい.
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