研究実績の概要 |
平成29年度は,昨年度に本研究課題を約6ヶ月間中断したことを受けて,その補完期間として研究を行った.大阪市立大学に滞在中の原田芽ぐみ氏と議論を行い,regular nilpotent Hessenberg多様体の射影埋め込みの体積の計算のための議論の精密化を行った.特に,Hessenberg多様体を旗多様体上のベクトル束の切断の零点集合と捉えることで,これまでの様々な議論の見通しが非常に良くなることを見出し,証明などを大きく簡略化した.この体積公式はregular nilpotent Hessenberg多様体のコホモロジー環の体積多項式と思うことができ,ある特別なHessenberg関数をとると,ルート系に付随するトーリック多様体のコホモロジー環の対称群不変な部分環の体積多項式と一致する. 平成27年度から平成29年度までに得られた主な研究結果を総合すると,1)原田芽ぐみ氏,堀口達也氏,枡田幹也氏との共同研究により,regular nilpotent Hessenberg多様体のコホモロジー環を明示的に決定し,それがポアンカレ双対代数であることを示した.さらにそれがregular semisimple Hessenberg多様体のコホモロジー環の対称群不変な部分環と環同型であることを証明した.2)Peter Crooks氏との共同研究により,minimal nilpotent oribt上のHessenberg多様体のトポロジーを調べ,そのコホモロジー環のある種の表示を与えた.3)堀口達也氏と枡田幹也氏との共同研究により,Hessenberg関数hがh=(h(1),n,...,n)という形をしている場合について,regular semisimple Hessenberg多様体のコホモロジー環を明示的に決定し,そこへの対称群の表現の既約分解も決定した.
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