研究課題/領域番号 |
15K17545
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研究機関 | 日本工業大学 |
研究代表者 |
佐藤 弘康 日本工業大学, 工学部, 准教授 (00375396)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 確率測度の空間 / フィッシャー計量 / α-接続 / α-測地線 / アフィン超曲面 / 一般化冪平均 / 双対接続構造 |
研究実績の概要 |
1. 確率測度全体のなす空間上のα-測地線の具体的表示が明らかになった. 筑波大学名誉教授 伊藤光弘氏は,確率測度全体のなす空間において,実数パラメーターをもつアフィン接続の族(α-接続)の具体的な表示式を導き,それらの接続に関する測地線が満たすべき微分方程式を求めた.符号違いの2つの(±α)-接続はフィッシャー計量に関して双対となり,情報幾何学においては基本的かつ重要な幾何構造である.昨年度は,α=±1 の場合について測地線の具体的表示を導き,測地線分の中点が端点の正規化された冪平均となることを示した.2016年6月に開催された関大微分幾何研究会に参加し,これまでの研究成果に関する講演を行った.そこでの研究議論において,一般のαについてはアフィン微分幾何の方法を利用することにより,測地線の方程式が得られるとの助言を得た.その方法とは,確率測度全体のなす空間をある関数空間に超曲面となるように埋め込めれば(正確にはもうひとつ条件を満たす必要がある),測地線の像が関数空間内のある特別は2次元平面の逆像として得られるというものである.この方法によって得られる曲線の方程式が伊藤氏が導いた測地線の微分方程式を満たすことを確認した. 2 .2016年7月にチェコ共和国ブルノ市で開催された研究集会に参加し,確率測度全体のなす空間上の測地線と正規化冪平均の幾何学に関する研究成果をポスター発表した.また,他の参加者と研究討議した. 3. 2016年12月に韓国水原市の成均館大学に滞在し,J.H.Park 教授と伊藤光弘教授と研究討議をした.また,確率測度全体のなす空間上の情報幾何について談話会で講演をした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度,確率測度全体のなす空間上のα-接続(α=0, ±1)とその測地線に関する研究が進展したため,当該年度は一般のαについての研究に注力した.本来の目的であるアダマール多様体上の重心写像の研究との関連については,まだ明らかになっていたないため,「やや遅れている」と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
1.確率測度全体のなす空間上のα-接続の幾何と一般化冪平均との関連について考察する. α=0および±1の場合,α-接続の測地線分の中点が端点の正規化された冪平均となることがわかっている.当該年度の研究により,一般のαについて測地線の具体的表示が明らかになったが,実際に得られたのは準測地線であり,測地線となるためにはパラメータを変換する必要がある(アフィン微分幾何学の一般論から,パラメータの具体的な表示式が得られる).このパラメータの性質について調べ,α=0および±1の場合と同様のことが成り立つか考察する. 2.アダマール多様体上のファイバー空間としての重心写像について研究する. 特に,準等長的など性質が非常に近い2つのアダマール多様体が等長的となるためにはどのような性質を仮定すればよいか考察する.これまでに明らかになった確率測度全体のなす空間上のα-接続と正規化冪平均の幾何との関連についても考察する. 3.定期的に筑波大学を訪問し,研究協力者の伊藤光弘氏と研究討議する.
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次年度使用額が生じた理由 |
注文していた書籍の入荷が遅れたため.
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次年度使用額の使用計画 |
研究発表, 研究討議および情報収集のための旅費に重点的に充てる. 2ヶ月に1回程度筑波大学を訪問し, 伊藤光弘氏と研究討議する. 国内の研究集会にも積極的に参加し, 情報収集に務める.
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