平成27年度から平成29年度まで毎年サンパウロ大学のM.A.S.Ruas氏、A.C.Nabarro氏らとともに、ド・ジッター空間内の余次元3の空間的曲面の漸近線に関する研究を行った。空間的曲面から任意に選びだされる3本の擬正規直交基底によって決まる第二基本量を定め、その漸近方向から定められる漸近線と、その方程式の解の性質を調べた。さらに、方程式の解が表すリフト曲面が特異点を持つ条件を、擬正規直交基底の取り換えや曲面の座標変換によらない不変量を用いて調べた。 空間的曲面には、階数2の点が曲線をなすという条件を仮定した上で、まず漸近方向の方程式に偽の解が現れる問題について調べた。その結果、方程式が偽の解を持つ原因は漸近方向を定義するために必要な従法線方向を定める方程式の虚数解によるものであることが分かり、階数2の点における偽の解が現れる条件を明らかにした。さらに漸近方向の方程式やその判別式を調べる過程でいくつかの不変量が得られ、漸近方向の数や重複度などといった特徴はその不変量の値によって見分けられることを明らかにした。これまでの研究で得られた階数2の点の第二基本量の標準形を用いて、漸近方向の分類とその不変量の値の関係を調べた。漸近方向のリフト曲面は、階数が2の点で特異点を持つことが分かっていたが、その理由を漸近方向の方程式を用いて示すことができた。今後の課題は、漸近方向の方程式から定められるリフト曲面の特異点の分類である。 平成28年度には、バレンシア大学のM.C.R.Fuster氏、バレンシア工科大学のE.S.Codesal氏らとともにド・ジッター空間内の光的曲面の研究を行った。
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