研究実績の概要 |
Uwe Franz, Sebastian Schleissingerとの共同研究において,単調独立増分を持つ非可換確率過程,あるクラスの1次元マルコフ過程,あるクラスのLoewner chainの間に全単射を構成した.さらに,これらの対象が時間的に一様な場合は,これに加えて1次元Levy過程とも対応関係がある.Loewner chainの最新の成果を援用することによって,単調独立増分過程の分布はコーシー変換(スチルチェス変換)が上半平面において単射になるという性質で完全に特徴付けられた.さらに,コーシー変換が単射になるような確率分布全体の中で,様々な部分クラスを議論した.特に,単峰分布全体はそのようなクラスをなしており,幾何学的関数論の観点から幾つかの同値な特徴付けを得た. Thomas Simon, Min Wangと自由安定分布の様々な性質を明らかにした.特に片側自由安定分布が「クジラ型」という形をしていることを示し,さらに一般にクジラ型の密度関数を持つ分布は無限分解可能であるなどの性質を持つことが分かった. 植田優基との共同研究で,自由乗法的たたみこみの下で単位円周上の確率分布の単峰性(おおよそ,確率密度関数がたった1つの極大点と極小点をもつという性質)がどのように変化するかを調べた.とくに,単位円周上での自由ガウス分布と対称単峰分布のたたみこみは常に単峰であることを示した.また古典確率論では実軸において2つの対称単峰分布のたたみこみは単峰であること(Wintner)が知られているが,単位円周における古典乗法的たたみこみに対しても同様の定理が成り立つことが分かった.
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