研究実績の概要 |
平成27年度における研究は平成28年度前半までに予定していた成果までを挙げることができており,予定していたFourier制限問題と荷重付掛谷極大関数の関係について平成28年度一年をかけて取り組むことができた.しかしながら,この問題に取り組むには多くの困難が含まれていることがわかり,研究計画の見直しを必要とした.現在は関連するいくつかの論文を解読中であり,さらに時間が必要であると予想される.これについては平成29年度の課題としてさらに時間をかけて取り組む考えである.そこで平成28年度の前半で発表した論文を再考した.これにより,強極大関数に関するFefferman-Stein型不等式を証明することができた.これは査読論文としてすでに受理されている.さらにこの研究を進めることで,直方体型の分数冪極大関数に関しても同様の不等式を証明することができた.こちらは現在投稿中である. また昨年の段階では投稿中であったreverse Holder classを考察した論文は受理されており,一定の評価を得ることができている.さらに,昨年度から取り組み始めたHausdorff容量を用いた極大関数の研究も継続しているが,最近になって荷重付Hausdorff容量の研究に取り組んでいる論文を発見した.これらの研究はまだ始まって日が浅い研究であるといえる.こちらに対しても上述のFefferman-Stein型不等式が成り立つ可能性を見出すことができており,一定の成果が上がっている.さらなる研究を急ぎ,まとまり次第論文として発表できる見込みである.
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度前半までの本研究課題は概ね順調に進んでいる.28年度後半からの計画であったFourier制限問題と極大関数との関わりを明らかにすることは難問であることがわかっている.解読すべき論文でまだ終わっていないものがあり,さらに時間をかけて取り組む予定である.その後,制限問題とNikodym極大関数との関連を調べることで,制限定理との含意を示し,我々の荷重理論と制限問題との関連を明らかにする. 一方で新たな研究方針を模索している.これまでの研究を踏まえ,Fefferman-Stein型不等式に関する研究を同時に推し進めたい.調和解析におけるMorrey空間の研究は著しい進歩を遂げているが,この空間の解析には自然にHausdorff容量の概念が現れ, 非加法的測度の性質を調べる必要がある.昨年度の研究でHausdorff容量を用いたHardy-Littelwoodの極大関数の有界性を示した専攻研究を一般化することに成功しているが,分数冪極大関数に対しても同様の結果が示されることがわかっている.また荷重付Hausdorff容量の結果についても興味深い現象を確認している.これらの結果を精査することで重要な結果を得ることができると期待している.
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