研究実績の概要 |
本研究の目的は, 偏微分方程式の逆問題, その中でも介在物同定の境界値逆問題の安定性についての解析である. 特に, 未知である介在物に関する情報が安定性にどのように影響するかについて調べることが本研究の目的である. このためには, 安定性評価を表す不等式に現れる定数が, 介在物に関する情報にどのように依存するかについて調べる必要がある. ここで介在物に関するどの情報に注目するかであるが, この逆問題の背景等も考慮すると, 物体内に複数の介在物がある際の, その介在物同士の距離が安定性評価に与える影響について考えることは重要な問題の一つであると思われる. 何故なら, これは物体内の介在物の個数を推定することの難しさを表現する一つの目安となりうるからである. 又, 物体の境界と介在物の距離が安定性評価に与える影響についての解析も重要であると思われる. こちらについては介在物が物体の境界に近ければ近いほど恐らく安定性は良くなるであろうが, それがどの程度よくなるかをより正確に表現することが目標となる. ところで介在物の形状については, 最終的には一般的なものを考えるべきであろうが, 現段階ではそれはまだ難しいと思われる. そこでまずは解析の見通しの良さを優先し, 対応する偏微分方程式の解がある程度明示的に表示できるような場合に対象を絞った. それは物体や介在物が円板に近い場合であり, その解表示については例えばLi-Vogeliusの論文の中で述べられている. 以上のような問題設定で解析を行っており, 計算の複雑さ故, 現在最終的な安定性評価についてはまだ得られていないが, 今後も解析を続ければ然るべき安定性評価が得られるであろうと考えている.
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