研究課題/領域番号 |
15K17559
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研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
夏井 利恵 日本女子大学, 理学部, 准教授 (60398633)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | エルゴード理論 / 複素連分数 / 数論的アルゴリズム |
研究実績の概要 |
無限大不変測度を持つ可測力学系におけるdeterminismとrandomnessの概念に着目し、エルゴード理論的研究からその概念の違いを捉える新たな不変量を見つける目的に向かって、具体的な数論的変換に対して数の複雑な振る舞いを探った。研究実施計画に従って当該年度に実施した研究の主な研究成果は以下の通りである。 1.「虚二次体上でのnearest integer連分数変換に関するエルゴード理論的研究」 初年度のHurwits連分数変換のnatural extensionの構成に関する研究成果を基盤に、前年度より着手していた研究を継続・発展させ、得られた研究成果を論文としてまとめ投稿した。具体的には、対象の数論的変換のクラスを広げて行き、虚二次体上のnearest integerタイプの連分数変換のエルゴード的性質の導出とnatural extensionを構成した。本研究によって虚二次体上で複雑な振る舞いをする数についての統一的な視点を可能とし、数の持つランダム性を捉える一つの結果になったと考える。国際研究集会で本研究成果を発表した。 2.「非アルキメデス数体上の数論的アルゴリズムに関するエルゴード理論的研究」 初年度の非アルキメデス数体上でのユークリッドアルゴリズムに関するエルゴード理論的研究を基盤に、前年度の研究を継続・発展させた。具体的には、研究対象を様々な数論的アルゴリズムとそれを導出する多次元写像に広げて行き、そのエルゴード理論的性質の導出を試みた。研究対象を広げて行くことにより様々な数展開の仕組みを統一的に見ることができようになり、本研究が今後fibered systemにおける研究に繋がって行くと期待している。 また当該年度も京都大学数理解析研究所においてエルゴード理論の力学系的側面に着目した共同研究「エルゴード理論の最近の発展」を開催出来たことは非常に有意義であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の研究実施計画に記載していた「無限大不変測度を持つ数論的変換のnormal numberに関するエルゴード理論的研究」および「標数正理論の中でのpolynomial group actionの考察とtree上のエルゴード理論的研究」の進展があまりなかったことは残念であるが、前年度の研究の進捗状況から当該年度は複素連分数と数論的アルゴリズムの研究に重点を置くべきだと考え、その判断により研究が進展し、成果を得て論文としてまとめ、投稿することが出来たので、おおむね順調に進展しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
本研究目的を達成する為には、様々な数論的変換を扱いながら多角的な研究を行う必要がある。そこで、これまでの研究を継続、発展、総括して行くと共に、特に、今後は無限大不変測度を持つ数論的変換のnormal numberに関するエルゴード理論的研究、および、数展開の一般的体系であるfibered systemに対する研究を推進する必要があると考えている。また、今後もエルゴード理論の研究集会を積極的に開催して、活発な研究活動を行っていく計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、2月後半に共同研究の為のフランス出張を計画していたが、研究発表で記載した「St Virgil FWF/JSPS Meeting」での講演を優先する必要があった為、スケジュールが厳しくなり、フランス出張を断念せざるを得なかった。また、「St Virgil FWF/JSPS Meeting」での講演、および、参加に伴うオーストリアへの旅費はFWF-JSPSプロジェクト予算で充当して頂いた為、本研究費の使用には至らなかった。次年度使用額として計上して頂いた経費は、当該年度に実行出来なかったフランス出張に充当する計画である。
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