無限大不変測度を持つ可測力学系におけるdeterminismとrandomnessの概念に着目し、エルゴード理論的研究からその概念の違いを捉える新たな不変量を見つける目的に向かって、具体的な数論的変換に対して数の複雑な振る舞いを探った。研究実施計画に従って当該年度に実施した研究の主な研究成果は以下の通りである。 1.「虚二次体上でのnearest integer型複素連分数変換に関するエルゴード理論的研究」 これまでのHurwits連分数変換に関する研究成果を基盤に、対象の数論的変換のクラスを広げ、虚二次体上のnearest integerタイプの複素連分数変換のエルゴード的性質の導出とnatural extensionを構成した。本研究成果は共著論文として投稿した。また虚二次体上でのnearest integer型複素連分数変換のgroup extensionに関する研究にも着手し、その研究成果の一部を国際研究集会で発表した。本研究成果は単著論文として準備中である。これらの研究成果によって虚二次体上で複雑な振る舞いをする数についての統一的な視点を可能とし、数の持つランダム性を捉える一つの結果になったと考える。 2.「非アルキメデス数体上の数論的アルゴリズムに関するエルゴード理論的研究」 これまでのユークリッドアルゴリズムに関する研究を基盤に、研究対象を様々な数論的アルゴリズムとそれを導出する多次元写像に広げ、そのエルゴード理論的性質の導出を試みた。本研究成果は共著論文として準備中である。本研究により様々な数展開の仕組みを統一的に見ることを可能とし、今後fibered systemにおける研究に繋がると期待する。 また京都大学数理解析研究所においてエルゴード理論の中でも確率論と作用素環論的側面に焦点をあてた共同研究「エルゴード理論の最近の発展」を開催出来たことは非常に有意義であった。
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