研究実績の概要 |
平成28年度の目標は, 1) Virasoro 代数の Verma 加群からランク r の Whittaker 加群への不確定頂点作用素の存在および一意性の証明の完成と, 2) 不確定共形ブロックの不確定特異点における展開の明示的な表示を理解するために, その特殊化である合流型超幾何積分の漸近展開を Schur 多項式を用いて具体的に表すことであった.
1) 前年度に結果を得ていた, ランク r の Whittaker 加群からランク r の Whittaker 加群への不確定頂点作用素の存在および一意性の証明を参考にし, 拡張することで, 目標であった Verma 加群からランク r の Whittaker 加群への不確定頂点作用素の存在および一意性の証明を完成した. この結果については論文を執筆中である. さらに, 2個の確定特異点型の頂点作用素の合成からランク 1 の Whittaker 加群からランク 1 の Whittaker 加群への不確定頂点作用素への極限を正当化することができ, 応用として第5 Painleve タウ関数の無限遠点における不確定共形ブロックを用いた展開公式を証明することに成功した.
2) 2点が確定特異点で1点がランク1の不確定特異点である3点不確定共形ブロックの不確定特異点での漸近展開の明示的な表示に関する予想を対応する合流型超幾何積分の不確定特異点における展開を Schur 多項式を用いて表すことで得た. 共形ブロックの確定特異点における展開は Young diagram を持ちいて書けることが知られていたが, 3点不確定共形ブロックの不確定特異点での漸近展開は skew Young diagram を用いると組み合わせ論的に表示できるという予想である. この結果は論文で発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
二つの目標のうち, 一つ目の目標である不確定特異点型頂点作用素の一意性と存在の証明が完成し, さらに第5 Painleve タウ関数の展開公式を得ることできた. もう一つの目標であった不確定特異点型共形ブロックの不確定特異点における展開は, 3点関数の場合に skew Young diagram による表示の予想を得ることができたため.
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今後の研究の推進方策 |
今後は, a) 不確定特異点におけるポワンカレランクが半整数である共形ブロックを定義し, それらを用いて, 第3,2 Painleve タウ関数の不確定共形ブロックを用いた展開公式を確立する. b) 3点不確定共形ブロックの skew Young diagram を用いた明示的な表示の証明を目指すとともに, それ以外の不確定共形ブロックの明示的な表示を得ることを目指す.
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