研究課題/領域番号 |
15K17567
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
佐藤 洋平 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (00465387)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 楕円型偏微分方程式 / 変分法 / 摂動法 |
研究実績の概要 |
3つの方程式から成る連立楕円型方程式において、引力的な項と斥力的な項が混じっている場合の解構造について研究した。これまでの研究において引力的な項の係数をパラメータとみなし、パラメータが十分大きいとき、正値解が存在することを証明し、さらに領域が球であったとしてもその正値解は球対称とは限らないことを証明していた。 今年度は、領域が球の場合でも、正値解の対称性が崩れる点に着目し、正値解の多重存在を証明した。具体的には、空間次元が2のとき、与えられた自然数kに対して、パラメータを十分大きいとき、k個のピークをもつ解が存在することを示した。 空間次元が3のときも少なくとも5個の正値解が存在することを示した。 同じタイプの単独の方程式の場合、領域が球であれば、正値解の一意性と球対称性が得られることは良く知られている。今回の研究成果は、引力的な相互作用項と斥力的な相互作用項が混じっている連立方程式の場合、領域がたとえ球だったとしても正値解の一意性が崩れること、しかも正値解の個数はパラメータを大きくすればいくらでも増えることを示したことである。この結果は、ユタ州立大学のZhi-Qiang Wang教授との共同研究であり、以下の論文として発表した。 「Multiple positive solutions for Schr\"odinger systems with mixed couplings」,Calc. Var. Partial Differential Equations, 54 no.2 (2015), 1373-1392. これらの研究成果は大阪大学で開催された国際Workshop「3rd Chile-Japan Workshop on Nonlinear PDEs」や大阪市立大学で開催された「第25回南大阪応用数学セミナー」等で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的では、おおきく分けて3つの問題を挙げたが、そのうちのひとつの正値解の多重存在の問題について、正値解の多重存在を証明し、論文として発表できたため。
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今後の研究の推進方策 |
今年度得た正値解の多重存在の結果は球対称正値解とエネルギーの比較をすることが証明の重要なポイントであった。このエネルギーの比較をする手法では、空間次元が2のときは、与えられた自然数kに対して、パラメータを十分大きくしたときk個の正値解をもつことが示せたが、空間次元が3のときは、5個の正値解の存在までしか示せない。今後は、エネルギーの比較なしで、3次元場合にk個の正値解の存在を示す研究を進める。 また、これまでの私の研究から、エネルギー最小の正値解はパラメータを大きくしていくと、一つの成分関数は球対称関数に近づき、二つの成分関数は領域の境界の近くにピークをもつ関数に近づくことが分かっている。しかし、ピークの場所は特定できていない。研究目的に挙げた、正値解のピークの位置を決定する研究について、KAISTのJ. Beyon教授から貴重な助言があり、J. Beyon教授の協力を得て研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
27年度の研究計画では空間次元が3のときのk個の正値解の存在証明をし、その結果をシンポジウムや研究集会で発表する予定であったが、当初の予定であった方法だけでは空間2次元は解決したものの、3次元では5個の正値解の存在の証明までしかできなかっため、計画を変更し、別の手法も取り入れてアプローチをすることとしたため未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は別の手法によるアプローチの研究をすすめ、日本数学会などの研究集会やシンポジウムでその研究成果の発表を行うこととし、未使用額はその経費に充てることとしたい。
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