研究課題/領域番号 |
15K17573
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
藤嶋 陽平 静岡大学, 工学部, 准教授 (70632628)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 拡散方程式 / 非線形現象 / 爆発問題 / 解の存在・非存在 / 特異性 |
研究実績の概要 |
本研究は非線形拡散方程式の解の挙動およびその形状についての研究である。特に、指数型非線形性や冪乗型非線形性など、様々な非線形熱方程式を考察し、その解析を行うものである。初年度の研究では主に以下の2つのテーマについて研究を行った。 本年度の研究では、一般の非線形性を有する熱方程式と初期値の特異性の関係を調べた。初期値が特異性を有する場合に非線形熱方程式の解が存在するか否かという問いは非線形偏微分方程式における基本的な問題である。解が存在するか否かについては初期値の特異性と非線形項の増大度とのバランスに依存するため、その議論を行うためには非線形項の型を特定する必要がある。本研究では、一般の非線形熱方程式の解に対するCole-Hopf変換の一般化を導入することにより、適切な優解を構成することができた。これにより、非線形項の型を特定することなしに一般の非線形熱方程式に対する解の存在を示すことができた。また、解の特異性が強い場合には解の非存在を示すこともでき、これにより、解の存在・非存在を分ける臨界の特異性を得ることができた。この研究結果については今後、査読付き国際雑誌へ投稿する予定である。 上記の研究に加え、指数型非線形熱方程式を扱い、時間大域解が存在するための初期値の減衰について調べた。時間局所解の存在には初期値の特異性が強く依存するが、一方、解が時間大域的に存在するかという問題に対しては初期値の減衰が大きくかかわっている. 本研究では、指数型非線形熱方程式に対する前方自己相似解を手がかりに、時間大域解の存在・非存在を分ける初期値の減衰を得ることができた。この研究結果については、現在、査読付き国際雑誌に投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の研究では、非線形項の形を限定せずに、特異な初期値に対する時間局所解の存在・非存在を分ける臨界の特異性を導出することができた。その過程で一般の非線形項を持つ方程式を扱うために有効な変換を導出することができ、今後はこの変換の様々な応用が考えられる。以上の理由により、今後の応用への展望も開けたため、研究はおおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
非線形熱方程式に対して、初期関数が持つべき特異性と解の存在・非存在の関係は初年度の研究で詳しく解析することができた。一方、時間大域解の存在・非存在はその解の無限遠方での減衰によって決まるが、その解析についてはべき乗型および指数型という典型的な非線形項に対してのみ行われている。初年度の研究で導出した変換を応用し、時間大域についても非線形項の形に依らない解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品の購入額が当初の予定よりも抑えることができたこと、および旅費の先方負担などにより全体的に支出額を抑えることができたため。
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次年度使用額の使用計画 |
最新の研究成果に関する情報を得るため、関西圏や関東圏で開かれる研究集会に参加し、より多くの情報を得られるように次年度使用額については旅費に充てる予定である。
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