研究実績の概要 |
走化性を持つ細菌の動きをモデリングしたケラー・シーゲル系と, この系に流体の動きを記述するナヴィエ・ストークス方程式を連立した系を扱う. 本年度は特にケラー・シーゲル系を中心に研究をすすめた. 平成27年度前期は拡散項・凝集項を一般化したケラー・シーゲル系の解の有界性について結果を得た. これまでの自身の研究では拡散項・凝集項がともにべき乗型の系を扱ってきた. 特に劣臨界という条件の下では可解性しか得られておらず(横田智巳氏 (東京理科大学)との共同研究), 有界性については明らかになっていなかった. そこで補間不等式を繰り返し用いた後に, 最後に最大正則性原理とよばれる不等式を持ち出すことで解の有界性が得られた. さらに, 解の局所存在を見直すことで初期値をこれまでより広い空間にとることができるようになった. この研究における拡散項の一般化とは, これまでのケラー・シーゲル系の研究報告では扱われていない指数増大を許容している. 平成27年度中期は伊藤昭夫氏, 横田智巳氏 (東京理科大学), 藤江健太郎氏(東京理科大学)と共同で癌浸潤モデルの可解性・解の有界性・解の時間無限大での挙動について研究してきた. この共同研究ではこれまで癌浸潤モデルとして多く研究されていたチャプラー・アンダーソンモデルに癌細胞を誘引する特徴を持つ``活性細胞外物質''を考慮した新しい数理モデルを対象としている. この方程式系でも拡散項は2つの未知関数に依存するという意味で一般化されている. 時間無限大での挙動は, 収束する点列の構成と空集合の厳密な議論により示される. 研究結果研究結果は現在論文としてまとめ投稿中である.
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