研究課題/領域番号 |
15K17579
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
相木 雅次 東京理科大学, 理工学部数学科, 助教 (90734400)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 非線形偏微分方程式 / 渦糸 / 初期値-境界値問題 / 可解性 |
研究実績の概要 |
本研究では,「渦糸」と呼ばれる流体における糸状の渦構造の運動の数学的定式化,およびその数学解析を行うことが目的である.さらに,「流体における現象」という現実の対象物を数学的に扱うことで,数学的理論の発展だけではなく,応用面も視野に入れる.これら目的達成のため,本年度は 1.Walter Craig氏の招聘,2.斜面の上を運動する渦糸の運動に関する数学解析,を実施した. 1.について:McMaster University の Walter Craig氏を招聘し,京都および横浜にて最近の研究成果について講演していただいた.特に,横浜での講演では「Vortex filament dynamics」というタイトルでCraig氏の渦糸の運動に関する最新の結果を講演していただいた.複数の渦糸の運動に関する新たな知見を得ることができ,また,同内容に関して Craig氏と意見交換・議論をすることができた.これらは,交付申請書の研究実施計画に記載した課題1「複数の渦糸の運動」の目的達成に資するものである. 2.について:交付申請書の「研究実施計画」に記載した課題2「複雑な地形の上を運動する渦糸」に関連して,斜面の上を運動する渦糸を表す初期値-境界値問題の定式化および一意可解性を証明することができた.具体的には,有限な長さを持った渦糸の端点が斜面の上を滑るように運動している状況を初期値-境界値問題として定式化し,ソボレフ空間における時間大域的な一意可解性を証明することができた.これら内容をまとめたものを学術誌へと投稿した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画で挙げている二つの課題のうち,複数の渦糸の運動を表す問題に関しては,特筆する進展はなかったが,複雑な地形の上を運動する渦糸に関しては進展があった.地形が一般的な形で与えられている問題への足がかりとして,斜面の上を運動する渦糸の運動を表す初期値-境界値問題を定式化することができた.さらに,この初期値-境界値問題の一意可解性を証明することができ,これら内容をまとめたものを学術誌へと投稿した.
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今後の研究の推進方策 |
進展の少なかった複数の渦糸の運動に関しては,前年度に引き続き渦糸間の相互作用の解析を行う.場合によっては,状況設定を簡略化し困難となっている点を浮き彫りにできるような解析方法をとることも検討する. 複雑な地形の上を運動する渦糸の問題に関しては今回得られた斜面の上を運動する渦糸の結果を足がかりに,地形がより複雑な場合の問題に取り組む.また,斜面上の問題に関して,厳密解の安定性などに関しても取り組みたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた学会や研究集会に出席できなかったため.
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次年度使用額の使用計画 |
新たに得られた研究結果を発表するために,出席する学会や研究集会を増やす.また,発表に必要な物品を購入する.
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