平成29年度の研究では、残念ながら、本研究についての具体的な進展は得られなかった。本研究の進展のためには、強い強制法公理 MM^+++ についてのより深い理解が必要であり、MM^+++ とその公理の源であるカテゴリー強制法について研究し、本研究を進めることが今後の課題である。一方で、本研究と関連して、以下の2種類の研究成果が得られた: 1. ZF の下で、\omega_1 が超コンパクト基数という巨大基数の性質を持てば、従属選択公理が成り立ち、Chang^+ モデルと呼ばれる非常に大きな集合論のモデルに属する実数の集合はすべてルベーグ可測性を初めとする良い性質(正則性)を持つことがわかった。 2. ZF の下で、AD^+ と V=L(P(R)) を仮定したとき、\Theta を上げる強制法による強制拡大では、AD^+ が成り立たないことがわかった。 1. の研究成果は、強い巨大基数公理の下で、上記の Chang^+ モデルにおいて、\omega_1 が超コンパクトになり AD (決定性公理) を満たす、という事実を背景に、\omega_1 が持つ巨大基数の性質が実数の集合たちにどういう影響を与えるか調べて得られた成果である。 2. の研究成果は、「実数を付加する強制法で AD (決定性公理) が真であることを保つものは存在するか」という無限ゲームと強制法についての素朴な問いについて調べていて得られた成果である。 上記それぞれの研究成果については、国内外の研究集会で計3回研究発表をし、さらに1回、国際学会の招待講演で発表予定である(詳細は下記「学会発表」を参照)。また、昨年度に投稿した maximality principle についての論文が受理され、国際雑誌に掲載される予定である(詳細は下記「雑誌論文」を参照)。
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