研究課題/領域番号 |
15K17590
|
研究機関 | 鳴門教育大学 |
研究代表者 |
宮口 智成 鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 准教授 (10367071)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | ブラウン運動 / 拡散性の揺らぎ / 更新理論 / 非マルコフ性 / 時系列解析 |
研究実績の概要 |
平成 27 年度は拡散性が揺らぐランジュバン系の理論的研究を中心に進めた。特に、拡散係数が 2 状態間で (非マルコフ的に) 揺らぐ場合の解析が終了した。具体的には、時間平均二乗変位 (TMSD) の相対標準偏差 (RSD) を用いることで、拡散性の揺らぎが軌道時系列データから特徴づけられることを示した (実際、平均 2 乗変位では不十分であり、RSD のような高次モーメントが必要であることが分かった)。これらの結果は混み合った系における拡散現象の実験データを解析する上で非常に有用であると考えている。また、以上の解析を遂行するために、 2 状態更新理論の枠組みを構築したが、この理論は多方面の応用が期待できると考えている。以上の結果は Physical Review E 誌に投稿中である。
また、関連する内容として剛体棒状ポリマーの研究も行った。剛体棒状ポリマーの拡散係数は方向によって異るため、回転運動に伴なって拡散係数が揺らぐ。この系の場合、上記の RSD 解析が有効ではないことが分かった。この問題は、TMSD をテンソル量として定義し、上記の RSD 解析を一般化することで解決した。すなわち、TMSD を元に 4 階テンソル量を定義し、この 4 階テンソルに適当なコントラクションを行うことで、必要な情報を得ることができる。特に重要な結果として、並進運動の軌道時系列データだけから、回転緩和の時定数が実験的に決定できることを指摘した。これらの結果は現在投稿準備中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は数値実験 (粗視化細胞質モデル) を主体とした研究を先に遂行する予定であったが、実際には理論解析 (拡散性が揺らぐランジュバン系) が先行することになった。この理論解析は当初の予定通り完成し、現在国際ジャーナルに投稿中である。さらに、高分子モデル (剛体棒状ポリマー) の理論解析から、当初予想していなかった興味深い成果も得られている (並進運動の軌道時系列データだけから、回転緩和の時定数が実験的に決定できること)。また、粗視化細胞質モデルの数値実験の準備も順調に進めており、全般的な進捗状況としてはおおむね順調であると判断できる。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度は粗視化細胞質モデルの数値実験を主として遂行する。基本的なプログラム自体は既に完成しているが、さらに流体力学的相互作用の効果を取り入れるなどの拡張作業も行う予定である。これらの数値実験は平成 28 年度を通して行い、後半には得られたデータの解析作業 (平成 27 年度に遂行した拡散性が揺らぐランジュバン系の理論結果との比較を含む) を開始する。
また、シングルファイル拡散モデルに関して、特性汎関数を用いた理論解析を平行して行う。各ブラウン粒子が剛体の場合には解析が終了しているが、さらに流体力学的相互作用などが存在する場合の解析を進めたい。
|