これまでの研究で整備した中心多様体理論により、モデル方程式を縮約し、樟脳船の集団運動に関する運動方程式を導出した。また、解析やシミュレーションにより渋滞現象を再現できることを示した。さらに、樟脳船に対する縮約方程式と、自動車に対するモデル方程式として知られるOVモデルにおける解の振る舞いを比較することで、定性的に等しい部分と異なる部分が存在することを確認した。 まず、粒子数密度の増加により一様流が不安定化することで渋滞相が出現することが分かった。また、粒子数密度に対する流量を計算することで、いわゆる基本図を得た。これらの結果は、樟脳船と自動車の渋滞現象の類似性を示唆している。一方、分岐解追跡ソフトフェアであるAUTOと用いることで両者の相違点が明確になった。OVモデルに現れる渋滞相では、速度が相対的に低い部分は必ず1カ所にまとまることが示唆される。一方、縮約方程式ではそのような箇所は複数現れる。以上の結果をまとめた論文に関して、雑誌掲載の受理が決定している。 興奮系の反応拡散方程式系におけるパルス波の集団運動は、各パルス波を特徴付ける遷移層の運動と相互作用を引き起こす外部場によって表現される。集団運動に現れる振動現象を解析することを目的として、この系に適用できる縮約理論の構築に取り組んだ。まず、パルス波が1つだけ存在する場合で解が十分進行波解に近い状態を想定し、中心多様体縮約を形式的に適用したところ、シミュレーションでの観察結果を再現できる縮約方程式は得られなかった。次に、フーリエ級数展開を利用した縮約方程式の導出を試みたが、現在までに振動現象を再現できる方程式の導出には至っていない。以上により、先行研究で知られている手法では遷移層の振動現象を解析するには不十分であることが分かった。
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