研究課題/領域番号 |
15K17598
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
永井 誠 筑波大学, 数理物質系, 研究員 (50522877)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 電波望遠鏡 / 鏡面測定法 / 電波干渉計 |
研究実績の概要 |
本研究は、電波望遠鏡の鏡面測定の新しい方法を確立することで、電波望遠鏡の性能をより高めようとするものである。また、本研究が提案する小型電波干渉計もそれ自体が電波望遠鏡の一種であり、その性能を高めることが高い測定精度に繋がる。そうしたことから、本研究を進める中で電波望遠鏡の性能について理論的考察を進めたところ、アンテナ同士の指向性の結合が有用であるという結果を得た。これにより、開口能率やスピルオーバー能率といった電波望遠鏡の基礎的な性能の意味が明確になり、本研究だけでなく電波望遠鏡一般の設計・開発に資するものである。これについて、研究会などで発表を行っており、近いうちに論文投稿予定である。 本研究は、位相を含めた点像分布関数(複素PFS)を電波望遠鏡に対して初めて測定しようとするものである。当初は南極での使用を想定し、小型電波干渉計を用いた方法を提案していたが、既存の反射鏡の複素PFSであれば、より簡潔な構成で直接測定できることを見出した。複素PFSの直接測定は例がなく、大きな意義がある。この方法での実測を目指し、計算機シミュレーションを行っている。 小型電波干渉計については、各部品を調達し、研究室の既存の装置と合わせて、組み上げられる見通しが立っている。各部品は計算機制御によって協調させることができ、電波干渉計として効率的に動作させられる見込みである。動作確認と較正を進めている。同じ部品を用いて、複素PFSの実測を行うことができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、焦点面の電場分布測定に用いる小型電波干渉計の開発、および、位相を含めた点像分布関数の測定方法の検討を行った。 小型電波干渉計については、各部品を調達し、研究室の既存の装置と合わせて、組み上げられる見通しが立った。干渉計として効率的に動作させるためには、計算機制御で各部品を協調させる必要があり、これが可能な構成とした。予定より少し遅れているが、各部品の動作確認と較正を進めている。また、計算機制御の準備を進めている。 位相を含めた点像分布関数の測定方法については、このような情報を実際の鏡面に対して実測すること自体に新規性があるとの認識に改めて至った。そこで、小型電波干渉計を用いる当初の提案とは異なる測定方法の可能性を検討した。その結果、調達済みの干渉計の部品を用いて、より簡潔に原理検証ができると期待される測定方法を見出した。これについて、計算機シミュレーションによる検証を行っている。この方法であれば、当初の方法よりも準備が容易であり、早く成果を出せると期待される。 また、本研究を進める中で、電波望遠鏡の性能について理論的考察を進めたところ、アンテナ同士の指向性の結合が有用であるという、本研究だけでなく電波望遠鏡一般の設計・開発に資する結果を得た。これについて、研究会などで発表を行っており、近いうちに論文投稿予定である。
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今後の研究の推進方策 |
まず小型電波干渉計を完成させ、性能評価を行う。この装置や部品を用いて達成可能な測定精度を評価する。 次に、位相を含めた点像分布関数(複素PSF)測定の原理検証を行う。これは当初の提案である小型電波干渉計を用いる方法と異なるが、複素PSFと鏡面形状の関係を、より簡潔に実測できると考えている。この結果について、論文などで発表する。これに成功すれば、通常の電波望遠鏡の鏡面測定としては十分なインパクトがあると期待される。 さらに、研究が順調に進めば、装置を小型電波干渉計に組み変え、南極での実施がより現実的な小型電波干渉計による測定方法の原理検証を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
小型電波干渉計に必要な部品を優先して購入しているが、購入予定だった部品の納入が遅れたため年度内には間に合わなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
購入予定だった部品を購入して、小型電波干渉計の組み立てを実施する。
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