電波望遠鏡がその能力を発揮するには、アンテナ鏡面の形状を測定・調整し、理想的に保つことが欠かせない。大型化・高周波化・広視野化を目指す次世代電波望遠鏡においては、鏡面形状測定法も重要な開発項目である。本研究では、新たに提案した焦点面位相差法の原理検証を目指し、小型電波干渉計を開発した。焦点面位相差法は、光学系を通過した波面を測定して鏡面形状を推定する鏡面形状測定法の一種で、電波望遠鏡の通常の光学系の波面を直接測定できる特徴がある。最終年度までに小型電波干渉計の構成要素を揃え、立ち上げを行った。この装置の特性測定を継続している。 焦点面位相差法の原理の理論的な検討も並行して進めた。数値シミュレーションの他、波面の情報を用いる他の鏡面形状測定法(位相回復ホログラフィー、電波点回折干渉計)との関連も検討した。 この理論的な検討な検討の中で、基礎となるアンテナ理論において何点か新しい洞察を得た。 ● 電波望遠鏡の開口能率が、光学系の瞳の概念を用いることで5つの因子に分解されることを示した。 ● アンテナの基本関係式を一般の受動的なアンテナに拡張し、受信効率を導入するとともに受信特性と送信特性の関係を整理した。 これら結果が波面測定に必要であること、一般性が高く波及範囲も広いと期待されること、特に次世代電波望遠鏡の光学系設計手法に大きく影響することから、最終年度はこの洞察の理論的な定式化に注力した。この内容は国内学会(天文学会秋季年会、ミリ波サブミリ波受信機ワークショップ)、国際学会(EuCAP)で発表し、論文1本受理済み、1本投稿準備中である。
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