研究課題/領域番号 |
15K17599
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小西 真広 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (50532545)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 光赤外線天文学 / 数値流体計算 / 非定常流 / 数値風況予測 / CFD / チリ / アタカマ |
研究実績の概要 |
望遠鏡・ドーム周辺の気流の乱れ(乱流)や淀みは、ドームシーイングと呼ばれる光学性能の悪化を引き起こす。本研究では、これまでいわば場当たり的に対処され軽視される傾向にあったこれらの風況現象に対して、風工学分野の技術を取り入れてより体系的に風況を制御することにより、安定的にドームシーイングを抑制させる仕組みを開発することを目的とする。非定常数値風況解析技術を導入することで、時間的に不安定な気流場を扱い、高精度にドームシーイングを抑制することができる。この仕組みは既存および将来の望遠鏡施設に適用できるものであり、観測的天文学の底上げになると期待される。 平成27年度は、天文学的用途への応用の第一歩として広いダイナミックレンジの空間グリッド(望遠鏡周辺で数10cm、施設上空数kmで数10m)をAFAへ導入し、数値解析を行うことに成功した。望遠鏡指向方向やドーム内における乱流や滞留の有無を確認することが出来たという点で、天文への応用は順調であるといえる(日本天文学会2016年春季年会において口頭発表)。 また、風況データの実測試験として、地面から鉛直方向に2m置きに風況計測器を3台設置出来る器具を製作し、チリ・アタカマ高地(標高2400m)のサンペドロ・デ・アタカマ市に東京大学が有する滞在施設において測定試験を実施した。24時間の連続測定により、風速・風向の時間変化の高度依存性データを取得することが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
AFAのメッシュグリッドの最適化とそれによる数値風況解析は順調に進展している。 一方、気流データの実測に関しては、山麓での計測試験は上手くいったが、悪天候により望遠鏡施設がある山頂サイトでは計測を実施する事が出来なかった。そのため当初の計画に対して若干の遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きAFAによる数値風況解析手法の最適化・安定化を行い、ドーム風況解析システムを完成させる。風況計測器を用いた気流の高度分布の測定は、27年度に用いた方法に加えて、より高い高度のデータを取得するために飛翔体等による方法も検討する。 望遠鏡施設が設置されている山頂サイトへアクセスが出来次第、現地へ渡航しそれらの手法を用いてデータを取得する。研究成果と進捗は国際研究会において発表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
風況計測器を10台購入することを予定していたが、既に所有していた3台を導入して手順の確立を行うことで、新規購入を翌年度に持ち越したため。また、研究メンバーとの打ち合わせをテレビ会議システムを通して行ったため、交通費を節約することが出来たため。
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次年度使用額の使用計画 |
当初の購入予定のものに加えて、いくつかの周辺機器も合わせて購入しなければデータ収集・解析がうまく進まない事が判明したため、計測器に関する機器の購入費に充てる。 但し計測機本体は、購入を予定していた型番が廃番になってしまったため、性能等を再検討し選定する。また、計測器を器具で固定する現在の方法に加えて、飛翔体に搭載して計測する方法も検討しており、見通しが立った場合にはその費用に充てる。
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