研究課題
すばる望遠鏡の広視野可視カメラHyper Suprime-Cam(HSC)で取得した撮像データを解析し,赤方偏移4-7にある銀河の候補天体を同定した.そのサンプルをもとに,分光追観測結果やモンテカルロシミュレーションの結果を組み合わせて高赤方偏移銀河の紫外光度関数を導出した.昨年度に引き続き,HSCを用いたすばる戦略枠観測による深宇宙探査で取得された初期データを解析した.深宇宙探査チーム内で公開されたカタログや整約済みの画像に対して昨年度に決定した色選択基準を適用し,過去の研究では見つけられなかったような個数密度の低い明るい銀河を含む高赤方偏移銀河を選択した.これまでにない高感度と広い視野を兼ね備えるデータを用いることで過去最大規模サンプルを構築することができた.さらに,すばる望遠鏡やマゼラン望遠鏡を用いた可視分光追観測を行ない,一部の銀河を分光同定することに成功した.構築したサンプルや分光観測結果,さらに天体選択の完全性をモンテカルロシミュレーションにより調べた結果を用いて,明るい高赤方偏移銀河の紫外光度関数を導出した.われわれの結果を,過去のハッブル宇宙望遠鏡を用いた暗い銀河の探査結果を組み合わせることによって,光度にして5桁に渡る幅広い紫外光度範囲での光度関数を世界に先駆けて導出した.得られた初期成果を国内外の研究会で発表した.また,新たに見つかった高赤方偏移銀河候補について分光追観測提案をすばる望遠鏡などに提出した.
2: おおむね順調に進展している
当初の予定通り,分光追観測によってわれわれの高赤方偏移銀河の選択基準が適切であることが確認できた.さらに,過去の経験を活かして本研究の大規模サンプルにもとづき紫外光度関数を導出することができた.
HSCによる深宇宙探査によってデータは取得され続けている.新たに得られたデータを引き続き解析して,高赤方偏移銀河の候補天体を同定し,分光追観測提案を申請する.その中で興味深い天体があればそれらを優先する.採択された観測プログラムで分光データが得られれば,それらを解析して分光同定された高赤方偏移銀河の性質を調べる.
当初予定では初期成果を論文にまとめて本年度出版したいとしていたが,チーム内での議論により次年度に日本天文学会欧文研究報告にて特集号が組まれることになり,われわれの初期成果もその中の一本として報告する予定となった.また,チーム会議や参加した国際研究会がいずれもたまたま日本国内での開催であったため,旅費を低くおさえることができた.これらのため,おおよそ論文出版費用に相当する額と旅費の余剰額が次年度使用額として生じた.
次年度使用額は主に論文出版と研究会参加のための費用として使用する予定である.
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すべて 国際共同研究 (6件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)
Monthly Notices of the Royal Astronomical Society
巻: 465 ページ: 2411-2419
10.1093/mnras/stw2924
The Astrophysical Journal
巻: 821 ページ: 1-23
10.3847/0004-637X/821/2/123