系外惑星の分光観測(トランジット観測や直接撮像観測)は、惑星の表層環境についての貴重な手がかりを与えるが、その鍵となる大気分子の吸収線や表面の分光特性の検出可能性は、雲の存在に大きく影響される。本研究では、将来の系外生命探査において重要なターゲットとなるハビタブルゾーン内の地球型惑星を対象に、ほぼ必然的に生じるH2O雲の全球的な雲量・分布を調べ、観測されるスペクトルへの影響を検討することを目標としている。
本年度は主に、自転周期や軌道が地球と異なる地球型惑星の全球的な水循環と雲の被覆パターンを、大気大循環モデル(GISS GCM modelE)で計算した。また、この大気大循環モデルで得られる大気のプロファイル(雲、水蒸気、温度の分布)に基づいて、HITRANを用いてline-by-lineで放射伝達を計算するコードを作成し、系外惑星としての模擬観測ができるようにした。将来のトランジット観測の良い対象となる低質量星周りの同期回転ハビタブル惑星については、トランジットスペクトルに影響を与える昼夜境界における雲の形成を、将来の直接撮像観測の対象となるであろう公転に比べて自転が早い水惑星については、低緯度・高緯度それぞれでのH2Oの輸送と雲量の惑星パラメータへの依存性を調べている。今後、大気大循環モデルの不定性を十分考慮した計算結果の吟味とともに、傾向の理解を助ける概念的なモデルの整備が求められる。
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