研究課題
太陽彩層の磁気流体波は光球や対流層で蓄えられた磁気エネルギーを太陽上空大気である彩層やコロナに運ぶ。そのため、磁気流体波は太陽風や太陽彩層・コロナ加熱において重要だと考えられているがどの程度のエネルギーを運ぶか明らかになっていない。本研究の目的は、磁気流体波の反射、屈折、干渉、非線形化を決定する太陽光球から彩層までの磁場構造を、複数のスペクトル線を同時に高精度に偏光分光観測し明らかにすることである。研究期間開始時からこれまでに、我が国で最初の「任意の複数の波長帯を同時に偏光分光観測できる太陽観測システム」を飛騨天文台ドームレス太陽望遠鏡に開発した。そして、開発した装置を用いて観測対象領域の太陽表面(光球、SiⅠ 1082 nm)、光球上層(NaⅠ 589 nm)、彩層(CaⅡ 854 nm)、彩層上層(HeⅠ 1083 nm)のスペクトル線における偏光スペクトルを同時に測定した。観測対象領域は黒点などがある活動領域、コロナからの放射が少ないコロナホールである。最終年度では、開発した偏光観測システムを論文にまとめ、査読雑誌Publications of the Astronomical Society of Japanに投稿した。論文は2018年3月に掲載が決定した。また、本装置を用いて活動領域のCaⅡ 854 nm、HeⅠ 1083 nmの偏光スペクトルを取得し、彩層磁場診断の能力を比較した。この検討は本課題だけではなく、次期太陽観測衛星プロジェクトの科学検討にも活用された。今後は、当初計画の最終目的であった光球から彩層までの磁場構造を観測データから明らかにする。現在、偏光スペクトル計算の専門家が働くNational Solar Observatoryに申請者は在籍しており、専門家と協力しながら研究を推進する。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件)
Publications of the Astronomical Society of Japan
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10.1093/pasj/psy041
https://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~anan/hsp/hsp.html