研究実績の概要 |
本研究は拡散(粘性、磁気、熱)入りの3次元磁気流体方程式をスーパーコンピュータを使って数値的に解くことで「太陽内部熱対流によるダイナモ機構」を物理定量的に明らかにすることを目的としている。平成27年度は計画初年度にあたり「対流ダイナモの発現条件」と「磁場の極性反転を特徴づける物理」の定量解明を目指し研究を行った。まず、より現実的な条件下での対流ダイナモの発現条件を調べるために、これまで用いてきた弱密度成層型の計算モデル (Masada & Sano 2014a,b)を、現実の太陽内部を模した強密度成層型計算モデルに拡張した。スパコンを使った超長時間積分計算と取得データの解析、理論解釈の結果、今年度は主に以下の4点を明らかにした: 1. 密度成層の強弱に寄らず乱流起電力によって駆動される大局的ダイナモが生じる 2.対流ダイナモによって生成された大局的磁場が、強密度成層下では、対流層表面近傍で黒点状磁場構造を自発的に形成する (黒点状磁場構造の形成は弱密度成層下では起こらず、強密度成層下に固有の現象) 3. 対流ダイナモの発現は「修正ダイナモ数」によってコントロールされる。修正ダイナモ数は我々が新たに見出した無次元量であり、乱流アルファと乱流パンピング、乱流磁気拡散に関連する3つの項の寄与で記述される。特に乱流パンピング項の寄与は強密度成層下に特有のものであり、従来研究では無視されていた。 4. 平均場モデルにもとづく線形理論を、磁場の3次元的発展と乱流係数の動径分布(乱流係数の微分項)を考慮した上で再考し、「対流ダイナモの発現条件」, 「磁場の極性反転をコントロールする物理量」, 「対流層表面での黒点状磁場構造の形成条件」をそれぞれ定量的に明らかにした。(1),(2)の成果については、すでに論文として受理されている(Masada & Sano 2016, ApJL)。
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