研究課題
我々の住む地球や生命の材料となる物質は宇宙空間のどのような環境で生成され、どのような化学的進化を遂げ、そしてどのような多様性を持つのだろうか。これらの謎に対し、本研究は従来の天文学に化学的視点を取り入れ、宇宙空間に存在する物質の天文観測を軸として、関連する理論計算・実験的研究の手法も駆使することにより迫っていく研究分野である。平成27年は赤外線観測から電波観測までの幅広い天文観測データの収集・解析を行い、系外銀河に存在する星間分子の化学的性質に関する研究成果を得た。本年度は天文学に関する計4本の査読付き論文が受理され、そのうち1本は自身がファーストかつコレスポンディングオーサーとなっている。当該論文は、日仏間の国際共同研究に基づく成果であり、自身がPIとなり国際的な共同研究を推進した結果得られた成果である。学会・研究会等における成果発表も積極的に行っており、今年度は計7件の発表を行い、そのうち2件は国際会議における口頭発表、3件は国内会議における口頭発表である。研究成果の積極的な国際発信は、自身の研究の国際的な評価を高めることに着実に貢献している。さらに、本年度は自身がPIとなり4件の天文観測プロポーザルが採択され、今後の研究につながる貴重なデータの収集も積極的に行った。これらのデータを活用して、来年度はさらなる研究発展が可能となることが期待される。また、自身の研究の視野を広げていくため、極低温での星間物質模擬試料の赤外線スペクトル測定実験など、観測天文学以外の分野にも挑戦をするための予備研究にも着手した。専門外の研究分野にも積極的に挑戦することにより、自身の研究の視野は確実に広がっており、私が専門とする天文学・アストロケミストリー分野の研究に対する有用なフィードバックが得られている。
1: 当初の計画以上に進展している
平成27年度の計画として予定していた天文観測計画の提案・遂行、得られたデータに基づく論文発表、国内及び国際会議における積極的な成果発表などは、全て順調に進展し、当初の計画目標は達成された。特に、ALMAなどの国際的に競争の激しい望遠鏡における新たな観測時間獲得や、これに基づく論文の執筆などは重要な成果である。さらに、天文観測だけでなく、実験室宇宙物理学の手法を用いた新たな研究分野にも着手しており、当初の計画以上に研究が進展しているといえる。
今後の研究においては、上述の観測的研究を継続しつつ、得られたデータに対して理論的解釈を与えるため、化学反応ネットワーク計算を応用した分子雲化学の数値シミュレーションを行い、銀河の重元素量環境と分子進化の関係性を理論的に明らかにしていく。さらに、本年度の実験的研究を発展させ、天文観測と実験室宇宙物理学を融合させた研究分野を切り開いていく。また、本年度の成果に基づき、今後の研究につながる新たな天文観測計画を様々な望遠鏡群に対して提案していく。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 4件) 備考 (1件)
Astronomy and Astrophysics
巻: 585 ページ: 1-20
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http://www.sci.tohoku.ac.jp/news/20160301-7724.html