研究課題
平成28年度は雛形となったフェイスオン天体G353に対して星周囲ダストのイメージング観測の提案をALMA cycle 4に対して行い、無事採択された。これは熱放射の観測としては現在の最高分解能の観測であり、大質量原始星周囲の非軸対称な降着流の構造を世界で初めて直接空間分解できる予定である。また10000 auスケールの星団形成クランプからエンベロープへ流れ込む降着流の高感度フォローアップ観測についてもCycle 4に提案したが、こちらは残念ながら不採択となってしまったためCycle 5に対して再び修正提案を行なっている。これまでの観測で得られた星近傍100 auスケールでのガス降着運動の観測結果については解析と議論を完了し、査読論文の投稿直前である。また第二のG353型フェイスオン天体候補であるG357について日韓VLBI観測網 (KaVA)を用いたVLBIモニター観測を行い、見込み角の直接測定を行なった。測定された見込み角はおおよそ視線方向から30度程度傾いており、G353の場合(10度程度)に比べてやや傾きが大きいことがわかった。両者はATCAの観測などからNH3輝線などにみる星周高温ガスの観測的特徴や赤外線のエネルギー分布が極めてよく似ていることがわかっているが、G357はG353に比べてジェットに付随する水メーザ強度の系統的な変動があまり見られないことが示唆されており、メーザ変動性が見込み角の指標になる可能性が考えられる。この結果については2017年日本天文学会春季年会にて報告済みである。
3: やや遅れている
平成28年度は10月より山口大学理学部の助教として採用されたため、前所属であった国立天文台水沢VLBI観測所からの異動があった。そのため論文作成や研究会への参加等が一時滞った。また前年度採択されたすばる望遠鏡の観測が悪天候などを理由に観測実施されなかったため、現在再度観測を提案中である。一方、今年度はALMAの観測提案が無事採択されており、致命的な遅れは発生していない。
最終年度はALMAの観測結果が7月に得られる予定であるが、データ保護期間が1年と短いことから、その解析を最優先に行う。また3年間のまとめとして研究会を開催し、ALMAの観測結果をベースに今後の研究方針について議論を行う。査読論文の投稿については現在準備中のVLA/ATCA観測結果、及びSMA観測結果の2本を予定している。
2016年10月に国立天文台水沢観測所から山口大学へ異動したことに伴い、国内外の研究会への参加及び論文作成が一時不可能であったため、旅費などの予算に余りが発生した。
以下3通りの使用を予定している。(1) 平成29年度は論文投稿をすでに準備済みであり、その投稿費用に当てる。(2) 平成29年度はすでに国際学会二件(台湾、イタリア)での発表を予定しているため、その旅費に当てる。(3) 研究会の開催時には共同研究者だけでなく、若手研究者や大学院生を招聘する予定であるため、その旅費補助に当てる。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件)
Monthly Notices of the Royal Astronomical Society
巻: 467 ページ: 2367~2376
10.1093/mnras/stx216
Publications of the Astronomical Society of Japan
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The Astrophysical Journal
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