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2016 年度 実施状況報告書

銀河間物質の発見に向けた偏波観測シミュレータの開発

研究課題

研究課題/領域番号 15K17614
研究機関鹿児島大学

研究代表者

赤堀 卓也  鹿児島大学, 理工学研究科, 特任准教授 (70455913)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード電波天文学 / 磁場 / 偏波 / 宇宙大規模構造 / SKA計画
研究実績の概要

本研究はセンチ波メートル波の大型計画SKAに向けて、宇宙磁場の研究を進めるものである。特に宇宙大規模構造の磁場に着目し、その発見にむけた偏波観測シミュレータの開発を進める。当該年度においては、介在銀河と偏波源の理論モデルを完成させシミュレータへ実装を進める予定であった。
上半期では、前年度に新展開した高速電波バーストを使った宇宙大規模構造の研究をさらに進めた。具体的にはSZ効果と組み合わせて銀河団外縁部分のプラズマの密度や温度分布を調べることができることを示し、その理論予測を得ることを達成した。FRBを本研究が位置付ける「偏波源」となり得る点を明らかにしたことには大きな意義がある。高速電波バーストは突発的に空間的にランダムに発生する点源でモデル化できるだろう。研究成果は共著論文として2017年1月にApJ誌に掲載された。
下半期は、介在銀河のモデル化について、特に空間分解能を下回る範囲で発生する偏波解消をどのようにモデル化できるかについて研究を進めた。研究の結果、いくつかの評価法・近似式を見出すことができた。シミュレーションと観測を繋ぐ大きな前進といえる。現在、研究成果は共著論文として投稿中である。さらに、来年度の計画を先取りする形で、ファラデートモグラフィーの技術開発も進めた。天の川銀河や近傍銀河の大局磁場と局所磁場の効果をトモグラフィーでどのように切り分けるかを提案した。これも大きな成果といえる。研究成果は共著論文として投稿中である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当該年度では、前年度より持ち越しとなっていた介在銀河のモデル化を進める予定であった。そして当初の計画である偏波源の理論モデルを完成させシミュレータへ実装を進める予定であった。また最終年度の観測データとの比較に向けて、観測提案をする必要があった。
介在銀河の研究は進捗した。具体的には偏波解消の評価法・近似式を見出した。しかしながら、シミュレータに実装するまでには至っていないので、次年度にこれを考慮する。介在銀河の研究で世界をリードするJamie Farnes氏をオランダから1週間招聘し、モデル化について集中的な議論を果たした。介在銀河のモデルを使った研究は、銀河円盤の磁場の宇宙論的な成長を探る重要な意義があることを理解した。
偏波源のモデル化は研究環境が変化しつつある。基本的にクェーサーはほぼ点源の扱いで説明がつきそうなことが広帯域な偏波観測からわかりつつあり、高速電波バーストも今のところ点源として扱って支障ない。ゆえに偏波源の高度なモデル化はむしろ動機が薄れつつある。むしろ介在銀河の偏波解消の特性から素性のよい(点源の)偏波源だけを集める方法が研究達成に近いのではと感じている状況である。
観測提案についてはASKAP-POSSUMプロジェクト内の初期科学運用に関する観測提案の準備を行い提出を果たした。残念ながら提案した銀局方向(理想的な観測領域)は優先目標視野には選ばれなかったが、観測戦略検討チームに招待され、相乗り観測などの可能性の検討を始めている。銀局方向の重要性は観測メンバーのよく知るところであるので、引き続き観測の実施を求めている状況である。
以上を総合すると、研究は引き続き順調に進展しているといえるだろう。

今後の研究の推進方策

当初の2017年度の予定は、ファラデートモグラフィー技術の適用と、SKAの豪州試験機ASKAPからの初期科学運用データを使った検証であった。
まず残念ながらASKAPの計画が遅延したために、POSSUMの初期科学運用のデータは2017年度の末に得られる見込みとなった。ゆえに観測データとシミュレータとの比較は達成できない。そこでファラデートモグラフィー技術のさらなる開発に注視しつつ、前年度から持ち越しとなっているシミュレータに盛り込む介在銀河のモデル化を確実に達成することを目指す。ファラデートモグラフィーでは、スパースモデリング技法をファラデートモグラフィーに応用できることがわかりつつあるので、この方法で宇宙大規模構造の磁場を検出できないかの検討を行うことにする。介在銀河のモデル化については、ここまでの研究進捗を踏まえてコードを完成させる。そして様々なパラメータでのモンテカルロ計算を実施し、偏波解消の特性から介在銀河の磁場の性質についての理解が得られないか、あるいは介在銀河を含む視線をどうやって選別できるのかについて研究を進める。シミュレータの出力にファラデートモグラフィーを適用する準備も始める。プログラムの雛形はあるのでそれを活用する。シミュレータプログラム全体の可用性や判読性の整備も合わせて進める。得られる成果は欧文査読付き論文に投稿し、国内外の研究会にて成果発表する。

次年度使用額が生じた理由

海外研究者の招聘に係る為替変動分。

次年度使用額の使用計画

研究会参加のための旅費として使用する。

  • 研究成果

    (16件)

すべて 2017 2016 その他

すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 4件、 査読あり 4件、 謝辞記載あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 3件、 招待講演 5件)

  • [国際共同研究] UNIST(韓国)

    • 国名
      韓国
    • 外国機関名
      UNIST
  • [国際共同研究] University of Toronto(Canada)

    • 国名
      カナダ
    • 外国機関名
      University of Toronto
  • [国際共同研究] Radboud University Nijmegen(オランダ)

    • 国名
      オランダ
    • 外国機関名
      Radboud University Nijmegen
  • [雑誌論文] Probing WHIM around Galaxy Clusters with Fast Radio Bursts and the Sunyaev-Zel’dovich effect2017

    • 著者名/発表者名
      Y. Fujita, T. Akahori, K. Umetsu, C. L. Sarazin, K.-W. Wong
    • 雑誌名

      The Astrophysical Journal Letter

      巻: 834 ページ: 13,16

    • DOI

      10.3847/1538-4357/834/1/13

    • 査読あり / 国際共著 / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Interacting Large-Scale Magnetic Fields and Ionised Gas in the W50/SS433 System2017

    • 著者名/発表者名
      J. Farnes, B. M. Gaensler, C. Purcell, X. H. Sun, M. Haverkorn, E. Lenc, S. P. O’Sullivan, T. Akahori
    • 雑誌名

      Monthly Notice of the Royal Astronomical Society

      巻: 467 ページ: 4777,4801

    • DOI

      10.1093/mnras/stx338

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著 / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Fast Radio Bursts as Probes of Magnetic Fields in Filaments of Galaxies2016

    • 著者名/発表者名
      T. Akahori, D. Ryu, B. M. Gaensler
    • 雑誌名

      The Astrophysical Journal

      巻: 824 ページ: 123,132

    • DOI

      10.3847/0004-637X/824/2/105

    • 査読あり / 国際共著 / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] The Sunyaev-Zel’dovich Effect at Five Arc-seconds: RX J1347.5-1145 Imaged by ALMA2016

    • 著者名/発表者名
      T. Kitayama, S. Ueda, S. Takakuwa, T. Tsutsumi, E. Komatsu, T. Akahori, D. Iono, T. Izumi, R. Kawabe, K. Kohno, H. Matsuo, N. Ota, Y. Suto, M. Takizawa, K. Yoshikawa
    • 雑誌名

      Publications of the Astronomical Society of Japan

      巻: 68 ページ: 88,106

    • DOI

      10.1093/pasj/psw082

    • 査読あり / 国際共著 / 謝辞記載あり
  • [学会発表] 高速電波バーストのUHF全帯域観測で探る宇宙磁場2017

    • 著者名/発表者名
      赤堀卓也
    • 学会等名
      重力波&電磁波サーベイ&突発天体研究会
    • 発表場所
      山口大学(山口県・山口市)
    • 年月日
      2017-03-23 – 2017-03-24
    • 招待講演
  • [学会発表] 衝突銀河団CIZA J1358.9-4750領域の広がった電波放射の探査2017

    • 著者名/発表者名
      赤堀卓也, 加藤佑一, 中澤知洋, 小澤武揚, Gu Lyli, 滝沢元和, 藤田裕, 中西裕之, 岡部信広, 牧島一夫
    • 学会等名
      日本天文学会2017春季年会
    • 発表場所
      九州大学(福岡県・福岡市)
    • 年月日
      2017-03-15 – 2017-03-18
  • [学会発表] UHF全帯域で探る宇宙磁場・パルサー・突発現象・星間物質2017

    • 著者名/発表者名
      赤堀卓也
    • 学会等名
      宇宙電波懇談会シンポジウム
    • 発表場所
      国立天文台(東京都・三鷹市)
    • 年月日
      2017-02-22 – 2017-02-23
    • 招待講演
  • [学会発表] Exploring the Diffuse Ionized Gas in Our Galaxy by means of Long Wavelength Radio Observation2016

    • 著者名/発表者名
      赤堀卓也
    • 学会等名
      第六回DTAシンポジウム
    • 発表場所
      国立天文台(東京都・三鷹市)
    • 年月日
      2016-11-24 – 2016-11-25
    • 招待講演
  • [学会発表] The Cosmic Web: A new discovery space in the SKA generation2016

    • 著者名/発表者名
      T. Akahori
    • 学会等名
      SKA 2016: Science for the SKA generation
    • 発表場所
      Goa (India)
    • 年月日
      2016-11-07 – 2016-11-11
    • 国際学会
  • [学会発表] 宇宙磁場・星間現象・パルサー・突発天体が集合する意義~汎用大型観測装置SKAのUHF帯コメンサルサーベイ~2016

    • 著者名/発表者名
      赤堀卓也
    • 学会等名
      日本SKA合同サイエンス会議「銀河系内現象から大規模構造へ」
    • 発表場所
      ルーセントタカミヤ(山形県・山形市)
    • 年月日
      2016-10-27 – 2016-10-29
  • [学会発表] Recent SKA-Related Activities in Japan2016

    • 著者名/発表者名
      T. Akahori
    • 学会等名
      Asia-Pacific Radio Science Conference
    • 発表場所
      Seoul (Korea)
    • 年月日
      2016-08-21 – 2016-08-25
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Probing the IGM2016

    • 著者名/発表者名
      T. Akahori
    • 学会等名
      Boutique & Experiments 2016: Radio
    • 発表場所
      Pasadena (USA)
    • 年月日
      2016-07-21 – 2016-07-23
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] MWAによる宇宙磁場研究2016

    • 著者名/発表者名
      赤堀卓也
    • 学会等名
      MWA-Japanキックオフミーティング
    • 発表場所
      名古屋大学(愛知県・名古屋市)
    • 年月日
      2016-07-05 – 2016-07-05

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公開日: 2018-01-16   更新日: 2022-02-22  

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