研究課題/領域番号 |
15K17615
|
研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
藤代 尚文 京都産業大学, 神山天文台, 研究員 (60601789)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 赤外線天文学 / フォトニック結晶 / 銀河形成 / 銀河進化 |
研究実績の概要 |
本研究では、望遠鏡口径で決まる回折限界を超える角度分解能を得ることができる、赤外線天体撮像装置の実現を目指し、従来のレンズやミラーにはない特性をもつフォトニック結晶スーパーレンズの開発を進めている。本年度は前研究課題(科研費番号:25800113)で検討した波長10ミクロンに設計したフォトニック結晶スーパーレンズについて、電磁場解析による更なる最適化と、実際に加工機を使用した試作を進めてきた。
前研究課題の検討結果から、2光子吸収レーザー・リソグラフィ技術によってフォトニック結晶スーパーレンズを制作する方針をとっている。本技術による加工においては、フォトニック結晶スーパーレンズの材料としてエポキシ樹脂系フォトレジストを使用するが、前研究課題の設計においては、このフォトレジストの光学定数として文献値を仮定していた。本年度の研究では設計精度を更に高めるために、赤外域多入射角分光エリプソメーターを用いてその光学定数測定を実施した。
次に、実測した光学定数にもとづいて新たに最適化したフォトニック結晶スーパーレンズを試作するため、2光子吸収レーザー・リソグラフィ加工機による加工試験を進めた。本加工においては、スピンコーターによるフォトレジストの基板への塗布、ホットプレートによるベイキング、レーザーによる描画、有機溶剤溶液による不要物除去を行う。加工の各過程においてはスピンコーターの加速度・回転数・時間、ベイキングの継続時間、レーザー強度等のパラメータの最適値を実験によって決定する必要があり、その作業を進めた。決定した最適パラメータにもとづいてフォトニック結晶スーパーレンズの試作品を加工し、現在その評価を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2光子吸収レーザー・リソグラフィ加工機による試作において、有機溶剤溶液による不要物除去の過程で、フォトニック結晶スーパーレンズがガラス基板から剥離して失われてしまう問題が起きており、その問題を克服するのに時間を要した。レーザー描画は1回につき24時間以上要するが、不要物除去の過程で加工したものが何度も剥離して失われてしまい、予定通りのスケジュールで研究を進めることができなかった。現在は発想を逆転させて、加工物を基板から積極的に剥離させたのちに収集する手段とることで問題を解決させ、研究を続行している。
|
今後の研究の推進方策 |
波長10ミクロン帯中間赤外線用フォトニック結晶スーパーレンズについては、試作品の実験による評価と、その結果を設計へフィードバックして更なる最適化を進め、本光学素子の最終的な性能確認を実施する。またこれと平行して、中間赤外線用フォトニック結晶スーパーレンズの知見を元に、波長100ミクロン帯で機能する遠赤外線用フォトニック結晶スーパーレンズの設計と試作を進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度制作中の中間赤外線用フォトニック結晶スーパーレンズは、科研費申請当初は民間業者への委託制作を想定していた。研究開始後の調査で、名古屋大学の微細加工プラットフォームで公開されている加工機を使用できることがわかり、研究代表者自身で細かい設定を指定しながら試作できることがわかった。そこで、名古屋大学の加工機を使用するように研究計画を変更した結果、当初の予算より経費が少なくなった次第である。
|
次年度使用額の使用計画 |
名古屋大学の加工機を使用した中間赤外線用フォトニック結晶の制作を継続しており、引き続き本装置の使用料、およびフォトレジスト等の実験に必要な物品の調達に、次年度使用額を使用する予定である。
|