本研究では、望遠鏡口径で決まる回折限界を超える角度分解能を得ることができる赤外線天体撮像装置の実現を目指し、波長10ミクロン帯の中間赤外線、および波長100ミクロン帯の遠赤外線で機能するフォトニック結晶スーパーレンズの開発を進めた。 中間赤外線用のフォトニック結晶スーパーレンズについては、2光子吸収レーザー・リソグラフィ技術で制作する方針をとっている。本年度はまず、前年度に実測したエポキシ樹脂系フォトレジストの光学定数をもとに電磁界解析を行い、フォトレジストの光吸収が極小となる波長14ミクロンで最適化したフォトニック結晶スーパーレンズの理論設計解を得た。次に前年度に得られた加工方法の知見をもとに、2光子吸収レーザー・リソグラフィ装置を使用して、上記理論設計解の制作を試みた。電界放出型走査電子顕微鏡を使用して加工精度を確認したところ、加工時のぶれに起因する大きな形状誤差が認められた。そこでワークの固定方法の改善に取り組み、形状誤差を低減させる方法を確立した。また、フォトニック結晶内部の微小な円孔構造に関しては、加工精度がレーザーの照射方向に強く依存することがわかり、円孔と平行にレーザー照射をすれば十分な精度が得られることを確かめた。しかしこの照射方法では、加工装置の制限のために必要なサイズを1回の加工で作ることができない。形状を多数に分割して加工してそれらをスタックする必要があり、そのスタック方法の検討まで行った。 遠赤外線用のフォトニック結晶スーパーレンズについては、上述の中間赤外線での知見をもとに、代表的なテラヘルツ波領域の光学材料について、実現可能性の検討までを行った。 なお、フォトニック結晶スーパーレンズの制作は、科研費申請当初は民間業者への委託を想定していたが、名古屋大学の微細加工プラットフォームの装置を使用する方針に変更したため経費が少なくなり、未使用金が生じた。
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