研究課題
本研究の目的は、ロング・ガンマ線バーストが発生する環境の一般的な描像を明らかにすることである。ロング・ガンマ線バーストは、短時間にガンマ線が宇宙から観測される現象で、巨大な星が一生を終える際の大爆発に起因すると考えられている。ロング・ガンマ線バーストを起こすような大質量星は、星形成が活発な領域に存在し、その周囲には星の材料である分子ガスが豊富に存在していると予想されている。そのため、分子ガスの観測を行うことは、ロング・ガンマ線バーストの発生環境を探る上で不可欠である。2015年度、世界最高性能のミリ波・サブミリ波干渉計であるアルマ望遠鏡を用いてロング・ガンマ線バーストが発生した母銀河の観測を行った。予定されていたGRB980425母銀河の観測が実行されなかったため、別で提案していた母銀河の観測を行った。提案していた12天体のうちこれまでに3天体の観測が行われた。現在、観測所によってデータのチェックが行われている段階で、データの準備が整い次第解析を行う。解析には専用ソフトウェアであるCASAを用いる。この間、CASAを用いた解析の準備段階として、アルマ望遠鏡で取得されたデータの解析を行った。対象はロング・ガンマ線バースト母銀河と同様に活発な星形成活動を行っている遠方銀河であり、ロング・ガンマ線バーストと星形成活動をとの関連を研究する上でも重要な天体である。2015年度はその研究成果として査読付き論文を2編出版した。また、これまで行ってきたロング・ガンマ線バースト母銀河の分子ガス研究の成果について、2015年8月にアメリカ合衆国で開催された国際天文学連合総会において口頭発表を行った。
2: おおむね順調に進展している
予定していた天体の観測が実行されなかった一方、他の複数の天体の観測が実行された。これによって、本研究を進行させることが可能である。データはまだ届いていないが、この状況についても平成27年度の研究実施計画では考慮している。データが届かなかった間は、アルマ望遠鏡で観測されたデータを解析することにより、データ解析環境を構築することができたため、現在の進捗状況としてはおおむね順調に進展していると判断できる。
今後、アルマ望遠鏡で観測されたデータが届き次第解析を行う。まだ観測が行われていない天体については観測が実行されデータの準備ができ次第解析を行う。また、アルマ望遠鏡の第5期観測提案において他のロング・ガンマ線バースト母銀河の観測提案を行い、サンプル数を増やしていく。
アルマ望遠鏡で観測されたデータが届いておらず、電子記録媒体の使用容量が予想より少なくなり、翌年度予算と合わせて電子記録媒体を購入することにしたため。
アルマ望遠鏡で観測されたデータを保存するための電子記録媒体を次年度予算と合わせて購入する。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件)
Publications of Astronomical Soc of Japan
巻: 67 ページ: 93-1, 93-7
10.1093/pasj/psv061
Astrophysical Journal
巻: 810 ページ: 91-1, 91-8
10.1088/0004-637X/810/2/91