研究実績の概要 |
ロング・ガンマ線バーストは、短時間にガンマ線が宇宙から観測される現象で、巨大な星が一生を終える際の大爆発であると考えられている。ロング・ガンマ線バーストを起こすような大質量星は、星形成が活発な領域に存在していて、その周囲には星の材料である分子ガスが豊富に存在していると予想される。しかし、これまで分子ガスの観測はほとんど行われてこなかった。本研究は、ミリ波・サブミリ波を用いてロング・ガンマ線バーストが発生した銀河を観測し、分子ガスの観点でその性質を理解することである。 最終年度では、赤方偏移z=2.0858のガンマ線バーストGRB080207母銀河において、超長基線電波干渉計VLAを用いて基底励起状態の一酸化炭素分子輝線CO(1-0)の観測を行った。この観測により、星形成の材料となる分子ガスの総質量を見積もることに成功した。星形成率や星質量との比較の結果、およそ100億年前に発生したGRB080207の母銀河は、その時代における一般的な星形成環境で発生することが確認された。この結果は、アストロフィジカルジャーナル誌に査読付き論文として掲載された(Hatsukade et al. 2019, ApJ in press.)。 本研究において、アルマ望遠鏡を用いて合計16のロング・ガンマ線バースト母銀河における一酸化炭素輝線情報の取得に成功した。サンプル数は過去に観測された母銀河の総数を上回り、既存の研究の中で最大となった。これによって分子ガスについて統計的な議論が初めて可能となった。これまでに求められている星形成率と比較した結果、母銀河の星形成効率や分子ガスを消費するタイムスケールは、一般的な星形成銀河の観測と同じスケーリング則で説明できることが分かった。これは、ロング・ガンマ線バーストが一般的な星形成環境で発生することを示唆し、発生環境についての新たな制限が得られた。
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