研究課題/領域番号 |
15K17622
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研究機関 | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工 |
研究代表者 |
渡邉 恭子 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工, その他部局等, 講師 (10509813)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 太陽フレア / 粒子加速 |
研究実績の概要 |
平成27年度はまず、e2v社製の「裏面照射型CMOS検出器」を購入し、本検出器のX線に対する応答と耐性を把握する実験を行う予定であったが、本年度は購入可能な「e2v社製の裏面照射型CMOS検出器」が存在しなかったため、検出器の購入自体ができなかった。したがって、検出器の応答試験も行うことができなかった。一方、検出器の性能評価に用いるX線発生装置は、国立天文台が所有しているX線発生装置を使用できることになった。このX線発生装置は、照射X線のエネルギーをコントロールできるため、当初購入予定であったエネルギー分布測定のためのSi-PIN検出器一式は購入する必要がなくなった。 「裏面照射型CMOS検出器」自体を本年度は購入することができなかったため、平成27年度中は、平成28年度に行う予定であった、太陽フレア加速域が観測されているデータの探索を前倒しで行った。太陽フレアの加速域は太陽フレア現象の上空にあると考えられているが、一般的には、X線では主フレアループからの強い放射のために観測されない。一方、軟 X 線に近い極紫外線では、紫外線分光装置を用いてそのスペクトルデータが得られており、各観測ラインの速度データからリコネクション点を特定することができる。また、加速域の電子密度変化を得ることによって加速粒子量も見積もることができる。 大量の太陽フレア観測データから効率よくフレア上空のコロナが観測されているデータを得るために「ひのでフレアカタログ(Watanabe et al., 2012)」を用いて、「ひので」搭載の極端紫外線撮像分光装置(EIS)で観測されたデータの抽出を進めた。特に加速域が主フレアループなどの熱的放射の影響を受けにくいリムフレア(太陽の縁で発生した太陽フレア)に着目し、現在もイベント探索を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成27年度には、まずe2v社製の「裏面照射型CMOS検出器」を購入し、本検出器のX線に対する応答と耐性を把握する実験を行う予定であったが、購入可能な「e2v社製の裏面照射型CMOS検出器」が存在しなかったため、検出器の購入自体ができなかった。したがって、検出器の応答試験も行うことができなかったため、現在までの進捗状況は「やや遅れている」とした。 一方、平成28年度に行う予定であった、太陽フレア加速域が観測できているデータの探索を前倒しで行った。フレア上空のコロナが紫外線分光装置で観測されているデータを探すために、「ひのでフレアカタログ(Watanabe et al., 2012)」を用いて、「ひので」/EISで観測されたデータの抽出を進めた。EISのデータは1枚のイメージを取得するために数分にわたるスキャンを行っているため、フレア現象中にEISのデータが存在していても、そのデータの中にリコネクション点や加速域を含む領域が含まれているかどうかは目で見てすぐに判断はできない。そこで、時間分解能が良いフィルターデータ(「ひので」/XRTやSDO/AIAのX線・紫外線データ)とも比較を 行い、EISデータに加速域を含むフレア上空のコロナが含まれているか否かの判定を行う。現在、このイベント抽出を進めており、フレア上空のコロナを観測できている個々のイベントの解析を行うまでに至っていない。そのため、進捗状況は「やや遅れている」とした。
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今後の研究の推進方策 |
e2v社製の「裏面照射型CMOS検出器」の購入については、現在でもe2v社へ、検出器の開発状況と購入可能時期について問い合わせを行っている。平成29年度の早い時期までに購入できないと本研究を実行できないため、本研究で必要な性能と同等程度の性能を持った他社製の「裏面照射型CMOS検出器」についても購入の検討を始めている。本研究に合致する「裏面照射型CMOS検出器」が見つかり次第、早急に購入したい。 「裏面照射型CMOS検出器」購入後の実験場所・装置としては、宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所の実験室や国立天文台のX線発生装置を使用できるため、問題なく進めることができると考えている。 平成28年度に行う予定であった、太陽フレア加速域が観測できているデータの探索を平成27年度に前倒しで始めたが、その詳細解析までに到れていない。現在所属している防衛大学校には太陽観測データの解析を行うための環境が整っていないため、これまでは国立天文台などの「ひのでサイエンスセンター」を利用して解析を進めていたが、今後は必要な計算機やデータストレージの購入、そして解析環境の構築から早急に進め、太陽フレア加速域観測データの詳細解析を早急に行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度中に購入可能なe2v社製「裏面照射型CMOS検出器」が存在しなかったことと、X線照射実験において国立天文台のX線発生装置を使用することによって、当初購入予定だった照射X線強度測定のためのSi-PIN検出器が必要なくなったため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
「裏面照射型CMOS検出器」については、平成29年度初め頃までに購入する。また、防衛大学校へ太陽データ解析環境を構築するために、計算機とデータストレージ、また必要なソフトウェアの購入に次年度使用額を使用していく。
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