研究実績の概要 |
太陽フレア現象中で発生している粒子加速機構を明らかにするため、太陽コロナに存在していると考えられている加速域を直接観測することができる「光子計測撮像」型の太陽X線望遠鏡を開発することを最終目標として、本望遠鏡を構築するために必要な高速・低ノイズ・X線分光性能を有する「裏面照射型CMOS検出器」の実現に向けた機器の開発実験と、加速域を観測するために検出器に必要な性能をこれまでの観測から見積もる研究を行った。 機器の開発実験については、「裏面照射型CMOS検出器」が当初購入予定であったe2v社から販売されず、また、同等の性能を持った他社製品も本研究費では購入不可能な額であった。そのため、他社製品は他資金で購入し、本研究費では関連する実験機器の購入を行った。他社製品の納入が平成29年度末となったため、機器の性能実験は平成29年度中に行うことができなかった。そのため性能評価実験は、平成30年度以降に引き続き行う。 加速域を観測するためには、その放射量や観測するために必要な所要時間などをあらかじめ見積もっておく必要がある。しかし既存のX線撮像装置では、太陽フレアの主ループからの強い放射のために、弱い放射しかない加速域は観測できていない。そこで、軟X線に近い極紫外線を観測している紫外線分光装置(「ひので」/EIS)を用いて、主ループからの影響が少ないリムフレアを中心に解析を行った。ひので」/EISが観測したMクラス以上のリムフレアは、2010年2月から2016年3月の間に28例あったが、SDO/AIAの高速撮像動画より、加速域付近と考えられる領域をEISが実際に観測していたのは(Imada et al., 2013, ApJL, 776, L11 にて報告済みの)1例だけであった。このため、加速域の放射量を統計的に見積もることはできなかった。
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