ベテルギウスの超新星の可能性が高まり,地球近傍で発生する超新星から放出される大量のニュートリノによって超新星の時間発展の詳細な描像が得られることが期待されている. 大型液体シンチレータ検出器KamLANDにおいては20秒の間に100万事象程度の膨大な事象が観測されると予想され,その頻度を測定するための時間情報の全ての記録が可能である.一方,エネルギー情報を再構成するために必須な波形情報の全ての記録はデータ収集系の性能限界を超えるため困難である.本研究では効率的な事象選択を可能とするトリガを開発することを目指した.KamLANDは球状の検出器であり,一様に発生するニュートリノ事象は,動径方向に見た際に外縁部での発生割合が高くなる.外縁部事象は観測時間分布が広がり,事象間偶発同時計数の割合が増え,事象再構成精度が悪化する.この時間分布の特性を用い,外縁部の事象を無視するトリガを考案した. 平成27年度の研究において実データを用いた解析を行い,時間分布の差異が小さく,事象選択精度が大きく向上しない可能性を見出し,これがデータ収集回路のCLKによる制限にあると推定した. 平成28年度の研究においては,検出器シミュレーションを構築し,より詳細なCLKの影響とトリガ効率の評価を行うとともに,トリガロジックの開発と高速CLKを用いた新データ収集回路の開発を行った.現行のデータ収集系の50MHzと比較して,200MHz以上のCLKを採用することにより,動径方向の事象選択精度の向上が得られ,16ns (4CLK)の時間分布に対する閾値により,中心から半径1m以内の事象の83.2%を取得しながら,全体の事象の99.6%を無視し,全波形記録が可能なロジックを開発した.また,200MHzのCLKを採用した新データ収集回路も2chの入力を備えたテスト基板の開発を行い波形取得に成功した.
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