研究課題/領域番号 |
15K17637
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中嶋 大輔 東京大学, 宇宙線研究所, 助教 (70720308)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 高エネルギーガンマ線 / データ収集 / CTA |
研究実績の概要 |
本研究では、次世代高エネルギーガンマ線望遠鏡アレイ(CTA)の23メートル大口径望遠鏡(LST)のための超高帯域データ収集システムの開発研究を遂行している。LSTの観測中に生成される膨大なデータを超高速かつ安定に収集するためのシステムを構築し、望遠鏡の不感時間を最小限に抑えることで望遠鏡の持つガンマ線検出感度を最大限に引き出すことを目的としている。データ収集システムは民生企画の10ギガビットイーサネット光通信網を用いて構築する。 CTAは大中小の3種類の口径を持つ望遠鏡を南北半球に合計で100台設置する計画であるが、その中でもLSTは20GeVからの最も低いエネルギー閾値での観測を担う望遠鏡であるため、トリガー閾値を限界にまで下げて観測を行う。そのため夜光などによるバックグラウンドにより、光電子増倍管1855本で構成されるLSTの焦点面検出器から生成されるデータ量は約30Gbpsという膨大な量になる。 当該年度は宇宙線研究所において19台のフロントエンドモジュールを組み込んだミニカメラシステムを構築して、ソフトウェアのフレームワークを構築し、データを収集する試験を行った。必要な性能を満たすイーサネットスイッチとしてDell x1052を選定し、必要台数のイーサネットスイッチと光通信用モジュールの一式を購入した。 また、中、小口径望遠鏡のデータ収集担当グループやCTA全体の中央制御担当者と包括的な枠組みでのデータ収集グループを構築し、ドイツ(ハイデルベルグ)で会議を行い、20年を見越すCTAの運用機関において安定したシステムを構築するために、拡張性やメンテナンス性を確保するため、データフォーマットやデータ転送プロトコル、ハードウェア構成を可能な限り統一化するための議論を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は45台のフロントエンドモジュールを組み込んだシステムの構築を計画していたが、フロントエンドモジュールの取り回しや、光センサーの保護、モジュールの冷却などの理由により、当該年度は19台でを組み込んだシステムでの試験を行った。得られた結果は外挿することができるため、台数の違いは大きな問題ではない。 望遠鏡の感度を落とさない範囲で不要なデータの書き込みを減らすためのアルゴリズムの研究も進めているが、データの流れのどの段階でどの程度まで減らすことが可能か、またどの程度減らすことが必要かは、CTA全体としてのハードウェア構成にも依存するため、今後も継続して議論を行い最適化する必要がある。 また、当初の計画では初年度のうちにスペインにおいて全モジュールを装填したカメラ試作機を構築した統合試験を行う予定であったが、本計画以外のカメラ構成要素において多少の予期せぬ問題等により、数ヶ月の遅れが出ている。現時点では平成28年度の夏には統合試験を行うことを予定している。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度のスペインでの統合試験までは、宇宙線研究所において試験を継続して行い、データ収集速度や効率、イベント再構成を最適化するためのソフトウェアの開発研究を行う。また他の望遠鏡グループとの議論を継続して行い、データフォーマットやデータ転送プロトコル、エラー処理手法などを可能な限り統一化するための研究をする。データリダクション手法については、モンテカルロシミュレーションとの比較を行いながら、可能な手法を研究、試験し、ソフトウェアだけでなく、ハードウェア構成の観点からも拡張性やメンテナンス性に優れた手法を開発研究する。 平成28年度の夏には全ての装置をスペインに輸送し統合試験を行う。その後、望遠鏡の建設地であるスペイン領ラパルマ島に輸送し、望遠鏡の組み立てとシステムの構築を行う。望遠鏡が完成次第、コミッショニングを行いガンマ線天体の観測を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
望遠鏡のアレイとしての包括的な枠組みで、拡張性やメンテナンス性に優れたハードウェア構成を行うために、本研究計画で進めている大口径望遠鏡のみならず、中口径や小口径望遠鏡グループ、またCTA中央制御グループなどと可能な限りハードウェアを共通化するための議論を行っており、最終調整をしている段階であるためネットワークのインターフェース等に当たる部分の購入を次年度以降に持ち越す必要があったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度の初めには他グループとの議論をまとめ、他グループとの共通化についても考慮に入れたハードウェアの選定を行う。平成28年度の夏までには選定試験を行い、当該物品費として計上する。
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