研究課題/領域番号 |
15K17644
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
三浦 光太郎 名古屋大学, 基礎理論研究センター, 研究員 (50511432)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | Leptogenesis / 素粒子(lepton)の集団励起 / 高温初期宇宙 / 有限温度ゲージ理論 |
研究実績の概要 |
本研究における第一の目標は、我々の先行研究で明らかにしたleft-handed neutrinoのspectral functionをインプットとしてright-handed neutrinoの崩壊率を計算する事である。これは初期宇宙におけるleft-handed neutrinoの集団励起効果を上記崩壊率に組み込むことを意味する。この計算を電弱相転移直後の温度領域において完了し、昨年の7月に開催された国際会議にて発表した。先行研究の1-loop Hard Thermal(HTL)近似を用いた場合に比べ、100GeV前後の温度領域で20%-30%ほど崩壊率が大きくなる事を示唆した。発表内容に基づき、convenerであったMikko Laine氏と議論を始めた。現象論的観点から、left-handed neutrinoや荷電lepton(電子など)に対するradiative correctionをresummation techniqueを用いて評価する必要がある事が示唆される。これは重イオン衝突実験で研究されているquark-gluon plasmaにおけるsoft-photon emissionと類似的であり、分野を超えた議論が期待される。しかしその方向性の研究はMikko Laine氏が圧倒的に先行しているので、本研究ではradiative correctionが重要ではない場合、即ち温度がright-handed neutrino massに比べてさほど大きくない領域に特化して計算を進める指針をとった。言い換えれば上記の議論により研究するparameter領域を制限する理屈を得た事になる。具体的には電弱理論におけるR_xi ゲージにおけるHTL resummation schemeを理論的に確立し、上記崩壊率に適用する研究である(2-loopに該当)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
遅れている理由は2つある: 1. 高温初期宇宙を想定する本研究では、R_xi ゲージの電弱理論とHTL resummationを組み合わせる必要がある。この組み合わせは、先行研究において未だ具体的な式が書き下されていない。従ってその理論的枠組み自体を自ら作り上げる必要があり時間と労力を必要とする。これについては研究を進めて議論と文献精査を進めた事で判明してきた事であり、当初の予想より時間を要する事が判明した次第である。 2. 本研究はEffort 75%を想定して計画された。しかし科研費獲得と前後して現在のフランス-マルセイユにおけるpositionが決まり、別な義務が発生し75%を割り当てられていない。
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今後の研究の推進方策 |
1. R_xi ゲージのHTL電弱理論の確立は、今年の夏をめどに完成させ、一時帰国時に京都大学の共同研究者と議論する。 2. Effortの割り当てについては75%は難しいが、優先順位をあげて本研究を最優先課題とする。現在のpositionにおける義務は2本の論文としてまとめられつつあり、少なくとも数ヶ月の間、本研究に軸足を移す機会を得られるだろう。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究における科研費の主要な用途は、名古屋大学或いは九州大学における計算機の共同利用枠購入である。研究実施状況がやや遅れているため、まだ購入して数値計算を始める前の段階であり、その分次年度にて使用する事となった。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度の夏を目処に数値計算実施のため計算機の共同利用枠を購入する予定である。
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