平成30年度は、前年度までに提唱してきた質量の起源を動力学的に与えるスケール対称性の破れのシナリオに焦点をあて、その理論が予言する部分的複合ヒッグス粒子が予言するLHC実験におけるシグナル検証、また、それに関連するフレーバー物理に対する予言に対して精力的に研究を推進した。さらに、前年度から注目をし始めた暗黒エネルギーの物理に関して、このスケール対称性の破れのシナリオの観点を導入し、よりいっそう広範囲にわたる相補的な質量の起源探究に関する研究を展開した。 年度の前半では、フレーバー物理に対して感度の高いシナリオを考案し、現在報告されているK中間子の荷電・パリティ非対称な崩壊プロセスに関する標準模型からのズレや、B中間子の半レプトン崩壊過程に関する標準模型を超える物理のシグナルの可能性を考察し、学術論文としてまとめた(JHEP)。 年度の後半では、LHC実験におけるヒッグス対生成イベントを解析し、標準模型の予言からのズレがあることを発見し、今後の高精度LHC実験までの発見可能性について考察し、学術論文としてまとめた(Phys.Rev.D)。 さらに、このようなスケール対称性の動力学的破れのシナリオがあたえる宇宙史への影響を考察した。その効果は特にアインシュタイン重力理論を修正するシナリオに基づく暗黒エネルギー、暗黒物質候補の初期宇宙の物理に著しく現れると分かった。この重要度はトップクォークとシナリオが予言する第二の(重たい)ヒッグス粒子とのフレーバー非自明な相互作用に対しての感度が本質的でもあることが分かった。 これらの成果に関連する内容を国内、国外の様々な研究会で発表し、他の研究者と活発な意見交換を行った。
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